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東方関係の二次創作の絵置き場です。大抵の絵から百合臭がしますので、苦手な方は速効逃げてください。ほのぼの・ギャグ系多めです。ピクシブの方がメインだったりもします。
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そそわ投稿済


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魔理沙 百合



続きは収納
やっぱりだ。なんかおかしい。
何かはわからないがおかしいものはおかしい。


紅茶を飲んでいたティーカップを、受け皿へカチンと乱暴に戻す。

なんだって言うんだ。なんだってこんなに――――



「……なんだってこんなにまずいんだ」


私のほかに誰もいない空間に向かって、こぼすように独り言をつぶやく。
まずい。
紅茶がまずい。

いや、正確に言うとまずいわけじゃない。
何か足りないのだ。何か物足りない、今一つの味なのだ。
例えばそれは、お茶を欠いた貧乏巫女、胡散臭さのないスキマ妖怪、白黒じゃない私、すなわち霧雨魔理沙のような物足りなさなのだ。

首をひねって原因を探るが、いつも通りにいれた記憶しかない。
茶葉もこのまえ新しくしたし、紅茶の抽出時間も完ぺきだ。

だとすると原因は……。

「やっぱこれしかないか」

机の上に置いてある紙をつまみあげて、そこに書いてある字をもう一度読み返す。

『私へ
 記憶が飛ぶかもしれないから一応書いておく。
 今魔法の実験を私の体へ行っている。
 とりあえず半日程度で効果が切れるようになってるから、そのまま過ごせ。
                             霧雨 魔理沙』

この前衛的なくせ字は明らかに私が書いたものだ。サインもあるし。
どうやら私は自分自身の体へ、何かの魔法をかけたらしい。
『何か』というあやふやな状態なのは、手紙で数時間前の私が危惧していた通り、魔法を行使したおかげで多少記憶が吹っ飛んでいるせいだ。
先程目が覚めると、私は部屋の床に倒れ伏していて、その床には見覚えのない魔法陣が書き込まれていて、なんでこんな事態になっているのかさっぱりわからなかった。
とりあえず立ちあがって部屋の中を見回してみると、机の上に自分で書いたあの手紙を発見したのだ。
なるほど、そうかいつもの実験か。
その場で納得した私は、埃っぽい床で倒れ伏していたためののどのイガイガを直すべく紅茶を入れてただ今ティータイムの真っ最中というわけだ。

しかし、しかしだ。
意識を取り戻した最初はぼ~としていたため気が回らなかったが、落ち着いてみるとなんだか落ち着かないのだ。
文脈がおかしいわけではない。
なんかおかしい。なんかざわざわする。
ここが決定的におかしいのだと断言はできないのだが、魔法使いの勘というか人間としての感覚というか、そういうものがおかしいと微かに訴えている気がするのだ。

これはあれだろうか。
ひょっとして魔法の行使中どっかで失敗したんだろうか。
自分の体で実験したのだから絶対安全だとは思うが、万が一、いや億が一、失敗していたらまずい事になりはしないか。
あの手紙があったから確かに混乱しないで済んだが、どんな魔法を行使したのか書いておいてほしかった。
実験を行う前の私の迂闊さを罵りたくなってくる。
やい、霧雨魔理沙! おまえは普段手を抜きすぎる! そして付け加えさせて貰えば、身の回りを片づけなさすぎる! そのせいであの魔法陣の資料がどの山なのかさっぱり分からないじゃないか! 記憶が飛んでもどんな魔法を使ったのか調べる事も出来ないなんてな! はーっはっはっはっ、いい気味だ!

……止めよう、むなしくなってきた。

そう、とりあえずざっと考えて八方ふさがりだ。
あっちもこっちも塞がってるが、この違和感は自分じゃどうする事も出来ない。
となると。

「専門家に聞きに行くか。こういうの得意そうだし」

脳裏に年中動くことのない、服が紫色で、たまに動きすぎると顔面も紫色になる人物を思い浮かべる。

思い立ったら即行動。
残っていた紅茶を一息で飲みほし、私は帽子をかぶるために立ち上がった。


















箒でひとっ飛びに湖を超えてみれば、目的地である紅魔館が見えてくる。
前から思っているけど、いくら名前がスカーレットだからって館まで赤い色で統一するとか趣味が悪いとしか思えないな。
それとも吸血鬼の美的感覚って人間と違うのかもしれない。
赤色を見てると癒されちゃう! だって吸血鬼だもん★、ってことなんだろうか。
うん、なんか友人関係を結んでいていいのか疑いたくなる趣味だ。
やっぱり赤よりも白黒、時代は白黒だ、白黒。目に優しいし、パンダも可愛いし、白黒は最高じゃないか。

取り留めのない事を考えつつ、私は紅魔館の門から少し離れた所にゆっくりと下降して降り立った。
いつも通り門番を吹っ飛ばして入ってもよかったのだが、今日は本を借りに来たわけじゃないから『客人』として紅魔館を訪れる事にする。
弾幕ごっこの気分でもないし、なんとなく気分が良くないのも相変わらずだから。

歩きながら門へと向かっていくと、ゆったりと吹いている風に髪を遊ばせながら腕を組んで、門の前に仁王立ちしている美鈴の姿が見えてきた。

でっかい鼻ちょうちん付きの。

あれよだれもたれかけてるんじゃないか? 完璧寝てるよな。
それでいて多分後ろからみたらきちっと門を守っているように見えるんだろう。
前に『咲夜さんにばれないように居眠りし続けて幾星霜……私は究極の寝方を身に付けた!!』とか無駄に壮大に語られた気がする。私が言うのもなんだが、仕事しろよ。

わざと大きい足音をたてながら近づいていくと、首をガクッと揺らして美鈴が目を開ける。
頭が回ってないのか、目をぱちぱちさせてキョトンと私の顔を見つめる。

「………………魔理沙?」
「そうだぜ」
「魔理沙、よね」
「だからそうだって。いい加減起きろ、仕事しろ」

じれったいって言うんだ。今日は虫の居所があんまりよくないんだぞ。
箒の柄で目の前の寝ボケ門番の鳩尾を思いっきり付いてやる。

「ぐほぅっ!?」
「さっさと通せよ、今日はご丁寧にも客人として紅魔館に来たんだぜ?」
「……ぐ、く……きゃ、客人はいきなり攻撃しないと思うんだけど……」
「どこぞの門番が寝ボケてるのが悪いんじゃないか? ナイフで針ねずみになる前に目を覚まさせてやったんだ、ありがたく思え」
「げほっ……寝ボケてたわけじゃなくて魔理沙がいつもと違ったから、おかしいなって」
「今日は弾幕ごっこの気分じゃないんだよ。とにかく早く紅魔館に入れろって。それとも本気出した私と戦いたいのか?」
「いや、そういう意味じゃ……まぁいいや。とにかく客人としてなら、どうぞお通り下さい」

門の前からひょいっと横にずれて私に道を譲る美鈴。
そうそう、最初から素直にそうしてればいいんだよ。

「ところで今日は本当にどうしたの?」
「ちょっとパチュリーに野暮用さ。本を借りに来たわけじゃないから安心しろ」

ただでさえ気分が良くないうえに、早くパチュリーの所に行きたい私の受け答えは自然とぶっきらぼうになる。
その様子を感じ取ってか美鈴はそっか、と短い返事を寄こしてまた門番のための定位置に戻って行く。

「ねぇ、魔理沙、誰かと喧嘩したとかなら早めに謝る方がいいわよ?」

去り際に振り向きながら美鈴が言う。
喧嘩? あいにくとそんなもんした覚えはさらさらない。
なんでそんな事言われなきゃいけないのか意味不明だ。
寝起きだから、こいつの頭の中で夢と現実とがごっちゃにでもなっているのかもしれない。
私は適当にそうだな、と返して紅魔館に足を進めた。

















「よう」

私が背中から声をかけたのは動かない紫もやし、もとい動かない大図書館と言われているパチュリーだ。
見ようによっては機敏な動きともとれなくもない速度で、眠りかけのような半眼を本から上げて私の方に顔を向ける。
そのまま二、三度私の顔を見ながら瞬きをする。
これは……驚いてるんだよ、な? どうもパチュリーの表情は分かりにくくていけない。
もっと表情筋動かせよ。

「今日は随分おとなしい登場じゃない。外で槍でも降ってるのかしら」
「残念ながら完璧に清々しい晴れ模様だぜ。どこかのひきこもりが外に出たらで日光で倒れそうになるくらいのな」

こんなほこり臭い所で引き籠っているんだから、貧弱になるのも当然だと思う。
私みたいに日光の下で元気よく飛びまわればいいのだ。
そしたら進化してパチュリーから筋肉ムキムキのマチョリーに……気持ち悪いな、想像するのやめとこ。

「それで、なんなの? 本を盗みに来たって感じじゃないわね。何か聞きたい事でもあるのかしら」
「ビンゴ。さすがは百年の魔女様、いい勘してるぜ」
「魔理沙に褒められても嬉しくないわね」
「褒め言葉は素直に受け取っておくものだぜ、たとえお世辞でもな」
「ご託はいいわ。聞きたい事って何なの?」
「と、そうだった」

私は今日の朝からの出来事を一通り説明して、机の上に残してあった私のメモと床の魔法陣を書き写した紙をパチュリーに手渡した。

「とまぁ、そんな感じで。変なざわざわ感も途切れないし、若干心配になったからちょっと助言をもらいに来たってわけだ」

内心で感じている不安を押し隠し、軽い言葉で締めくくる。
そんな私の不安をよそにパチュリーは話を聞いてる間からずっと無言を保ち続けている。
今は魔法陣を書き写した紙をじっと見つめている。

きっと色々な知識を総動員して魔法陣の解析をしているのだろう。
なんだかんだいってパチュリーは人に頼まれると真面目にやっちゃうタイプだしな。
しかしここまで表情が動かないうえに、体まで動かないとなるとまるで地蔵みたいだ。
地蔵パチュリー。
なんか知識がたまる地蔵とかで参拝客きそうじゃないか。
パチュリー地蔵様ー、ご利益下さーい。なんちゃって。

と、計ったようなタイミングでパチュリーが私の方に目を向ける。

「おぉう!?」
「何おどろいてるのよ」
「あ、あぁ、いやなんでもない。で、どうだ。その魔法陣どういう魔法かわかりそうか?」
「魔理沙」

表情を崩さず、なんでもないことのようにパチュリーは答えを返す。



「あなた死ぬわよ」




………………は?
思考能力が停止する。
なんだ、なんて言ったのだ、この魔女は。
死ぬ? この私が死ぬだって? そんなバカな。そんな事あるはずがない。

「お、おい、なんだよそれ」
「こんな愚かな魔法を自分にかけるだなんてね、私の魔理沙に対する評価は買いかぶりだったのかしら。愚かしいにも程がある。まぁ助かりたいのなら方法がないわけじゃないけども」

そこで言葉をとぎって視線を注いでくるパチュリー。
ゴクリと自然と喉が鳴る。
助かる方法、それさえあれば―――――

「まずはじめにドロワーズを頭にかぶった状態の下着姿で『私は下着仮面! 幻想郷の下着を守るもの! 夢と希望は下着の中に!』と叫びながら幻想郷中を飛び回って」
「オーケー、ゴートゥーヘル。紫もやし」

高速で右手に構えた八卦炉に力を込めていく。

「まちなさい、魔理沙。人の話は最後まで聞くものよ」
「うるさい! 人で遊びやがって! 言っていい冗談と悪い冗談があるだろうが!」
「心外ね、冗談じゃないかもしれないじゃない」
「冗談じゃないのか?」
「馬鹿ね、冗談にきまってるじゃない」

ダメだ、頭の血管切れそうだ。
とりあえず怒りのせいで迸る熱いパトスを、マスタースパークにして放出しておく。
……ちっ! こういう時に限って普段からは信じられない速さで椅子ごと横によけやがる。
あまりの速さだったせいかパチュリーの残像が出来て、その残像が『こぁー!?』という叫び声とともにマスタースパークで吹っ飛ばされていく。
ん? 残像じゃなくて身代わりの術か? 魔女のくせに忍者ってなんだそれ。
どーんと壁にマスタースパークがぶつかる音とともに、目の前でパチュリーが溜息をつく。

「全く、落ち着きなさいよ、はしたないわね」
「あんなタチの悪い冗談言う方がよっぽどはしたないと思うんだがな!」
「あんな下らない魔法陣見せられれば、タチの悪い冗談の一つや二つ言いたくなるわ」
「は?」
「さっき言った死ぬって所は冗談だけど、魔理沙を愚かだと思ったのは本当よ。こんな魔法陣を実行するなんて馬鹿じゃないかしら?」
「ちょ、ちょ、ちょい待て。どういうことだ、あの魔法陣の事そんなに詳しくわかったのか? どんな魔法なのか説明してくれよ」

普通、魔法陣というのは組み上げるのに多大な時間と労力をかけるもので、基礎的な魔法陣の上にさらにオリジナリティの要素を付け加えるとその効果の表れ方はまさに無限大となる。
特に私は自己流を激しく追及するため時には基礎すら吹っ飛ばして、効果を強める場合がある。
そのため上手くいくときはいいが失敗すると副作用みたいなものが出る時もある。
今回みたいに記憶が飛ぶとかな。

ま、それは置いておいて、そういう風に組み上げられた魔法陣の解析を他人がやる場合それなりの時間がかかるものなのだ。

だからさっき『死ぬ』って言われた時にもう少し冷静だったら即座に『嘘だろ』って返せたのに。
くそ、今日の私はダメだ。

「分かるわよ。この魔法陣、効果が半日で切れるような組み上げられ方だから結構簡素化されているし。後はここ最近のあなたが盗んでいった本の傾向とか、今のあなたの状態と様子から複合的に考えていけば、大体はね」
「そうか、良かった、さんきゅっ! それでどういう魔法なんだ?」
「それは教えない」

さらりと拒否の言葉を口にするパチュリー。
あまりにも自然に断られたため、『おう、そうか』と返事をしそうになってしまった。

「な、なんでだよ!? 別に教えてくれてもいいじゃないか!」
「嫌よ。毎回本を盗まれているのと、こんな愚かな魔法陣を見せてくれたお礼だとでも思って頂戴」
「本は借りてるだけだ、死ぬまでには返すさ。……というかそんなにダメな魔法なのか?」
「えぇ、とっても。なんか魔法使いとしてどうのこうのというよりも、人間として終わってる感じね」
「そ……そこまで」
「まぁ、半日で効果は切れるんだし、多分身体への害はないから安心するといいわ。飛んだ記憶もそのうち戻るでしょ」

がくりとうなだれる私を尻目に、話は終わりだとでもいうようにパチュリーは読みかけの本へ視線をむける。
こうなってしまったら泣こうがわめこうが絶対にこの魔法がなんなのかなんて教えてくれないだろう。
パチュリーは頑固者だからな。こうと決めたらてこでも動かない。
精神的な意味でも、物理的な意味でも。なんせパチュリー地蔵だから。

なんとなく釈然としないが恐らく効果が切れてみればどんな魔法だったか分かるだろう。
もしくは魔法が切れる前に記憶が戻るかも知れない。
そう前向きに考えてとりあえず図書館から出て行こうと歩き始めると、パチュリーから声がかかる。

「ねぇ、魔理沙。ここは図書館よ。大量に本があるわね」

当たり前のことを口にのぼらせる。
何言い出したんだ、こいつ。
一応足を止めてパチュリーの方へ向き直ると、パチュリーの目線は相変わらず本の上だった。

「本、特に物語とかが顕著だけれど、ああいうものは途中のページを破られたりすると意味が通じなくなる。そのページに物語の根幹をなす大切な事が書いてあればあるほどね。酷い時にはたった数ページ破られただけでその本の存在価値が急落してしまう場合があるわ」

私は何となく口をはさめなくて、ただ黙って聞いている。

「作者自身が気に入らないと破り捨てるのならまだいいわ。自分で綴った物語だもの、自分の好きなようにする権利がある。でも他人が勝手に都合が悪いからとページを切り取るのは、愚かしい行為だわ。例えそれがその物語をつづった作者のためになるかもしれないとしても、よ。余計なお世話ってことも有り得るし、その物語に対する冒涜。なぜそんな事をしたのかという理由は重要じゃないのよ。要はその行為自体が罪なんだもの」

何が、言いたい。
そう視線に圧力を込めてパチュリーの方をじっと見つめる。
その視線に気づいたか気付かないのか、パチュリーは本を見たまま溜息をつく。
そして私の方へ顔を向けた。

「私が言いたい事はそれだけ。本を破るなんて真似よしてちょうだいって事よ」

がくっと体の力が抜ける。
なんだっていうんだ、そんな当たり前の事をいいたいがためにわざわざ呼び止めたっていうのか。
不肖霧雨魔理沙、本を借りても破るなんて真似一度もした事がない。
そこまでひねくれてない。

「おいおい、私は本を破ったりなんかしないぞ? 本は大切なもんだからな、借りはするけど破損なんてさせないぜ」
「そうね、ならいいのよ。あなたならやりかねないから、先に忠告しただけだし」
「む、しないぞそんなこと! 絶対にな!」
「はいはい。じゃあね、魔理沙。次からも今日みたいな大人しい来訪を期待するわ」

パチュリーはそう言ってそのまま読書に没頭し始める。
なんて言うマイペースなやつなんだ。
このイライラ感は次回の訪問時にマスタースパークを3発くらい打ち込む事で解消することとしよう。

足音高く図書館を後にする。
さて、これからどうするか。
大丈夫だと太鼓判を押されたが、一人で居るとなんか不安に駆られるしな。

よし、ここはいつも暇してる巫女んとこでも行って時間をつぶすか。

















「おーす、霊夢。邪魔するぜ」

緩やかな午後の時間帯、霊夢は特別な用事がない限り、掃き掃除をしているか縁側でお茶をしているか昼寝をしているかのどれかである。
私は鳥居の前に降り立って、境内を通って庭に回り込む。

「あら、魔理沙じゃないの」

すると縁側には私の予想通りお茶を飲みながらボーっとしている霊夢がいた。
青空に紅白、色合い的には何とも風靡である。
今一つ物足りない気もするが、好きな色の取り合わせなので合格点をやろう。
風に揺られる霊夢の赤いリボンが何かを彷彿とさせるが、なんだったろうか。

「今日はどうしたのよ」
「いや、ちょっとな、遊びに来ただけさ。時間つぶしにな」

ふーんと頷いて、霊夢は私の事をじろじろと見てくる。

「なんだよ、なんか顔についてるのか?」
「別にそういうわけじゃないけど、ね」

と、私の上をさまよっていた視線が、私の手に握られている袋にたどり着く。
さすが貧乏巫女、目ざといな。
手を持ち上げて袋を霊夢の目の前で揺らす。

「さっき紅魔館に行ってきたんだが、帰りに咲夜に貰ったんだよ。マドレーヌって菓子らしいぞ」
「へぇ、ますます珍しい。咲夜があんたにお土産渡すなんてね」
「なんか大人しい来訪は歓迎とかなんとか。ただ大人しい私はイメージに合わないから、さっさと元に戻れって言ってたな。別に弾幕ごっこする気分じゃなかっただけなんだがな」

言いながら霊夢の横に腰を落とす。
ぽかぽかの陽気は何ともすごしやすい。
いつも通りのセルフサービスで、霊夢の横に置いてあった茶器からお茶を汲む。
その間霊夢はごく当然に袋の中を探ってマドレーヌを取り出している。
なんか知らんが、一人じゃ食べきれないくらい咲夜が包んでくれたから量もたっぷりあるし、いいんだけど。
そういえば『一人じゃこんな食べれない』って言ったら『どうせ二人で食べるんでしょ』と言われた。
私が霊夢のところに行くのが分かっていたのかな、さすが完璧で瀟洒なメイド様だぜ。

お茶を入れてゆっくりすすると、安い茶葉の香りがした。
やっぱり普段よりもまずく感じる。つーか酷い味だ。泥水じゃないだろうな。
ここのお茶は決して美味い訳ではないが、こんなにまずくはなかった気がする。
やっぱり魔法の効果は薄れていない。むしろ酷くなってないか? これ本当に半日で効果切れるんだろうな?

不安な思考をそらすように霊夢の方を見ると、何故か霊夢はマドレーヌを右手で顔の前に摘みあげたままじっと見つめている。
霊夢が即座に食べ始めないなんて珍しい。
大抵腹を空かしているから、お土産なんてあったら即効かぶりつくのに。
しかし、マドレーヌと霊夢か。響きが似てるな。
まどれーぬ、まどれいぬ、まどれいむ、まどれーむ、マドレーム!
味は微かなお茶味、紅白の二つ詰めで価格は200円とか。
博麗神社土産とかで売り出せばいけそうじゃないか?

「ねぇ、魔理沙」
「あ?」

明後日へ飛びかけていた思考を現実へ引き戻す。
霊夢は相変わらずマドレーヌを持ったまま見つめている。

「あんた今日様子変だわ。なんかあったの?」

ちょっと息がとまった。
やっぱり勘だけは鋭いな、この巫女は。

「さすが霊夢だ。ま、なんだ、ちょっと魔法の実験しててな。そのせいで変に見えるかもしれないな」
「ふーん。どんな魔法なのよ」
「それが魔法のショックで、魔法を使う前の記憶がちょっとあいまいでな」

おどけたように言って、内面を出さないように努力する。
こんなぐらぐらでゆらゆらする気持ちを霊夢に知られたくない、なんとなく。

「半日で効果は切れるから、今日の夕暮れくらいには効果がなくなるはずだ。だから後少しで元に戻る。そのころには記憶も元通りに戻ってるといいんだがな」
「そう、半日で効果が切れるならよかったんじゃない? なんかロクな魔法じゃなさそうだし」

ロクな魔法じゃない? なんで魔法の事を何にも知らない霊夢がそんなことわかるんだ。
そういえば同じような事をパチュリーにも言われたな。
人間として終わってる、愚かな魔法だって。
記憶にはないが魔法を自分にかけたのは間違いなく私なのだし、その魔法の事をこき下ろされるってことは馬鹿にされているって事だ。

「……失礼だな。魔法の事を知らないくせにロクでもないなんて言うな」
「そうね、私は魔法の事は知らないわ」

何故か弱弱しい反論になってしまった私に対して、霊夢は言葉を返す。
その手には相変わらずマドレーヌ。
気づけば霊夢の目は私の目をしっかりと見据えていた。

「でも、魔理沙の事は知ってる。あんたがそんな風になる魔法なんてきっとロクなもんじゃないわ」

言いきる霊夢。
一瞬呆然とする私。
そんな風? 今の私の感じてる違和感が霊夢にはわかったのか?
馬鹿な。そんな事一言たりとも話してないし、できるだけ普段の自分と変わらないよう振舞っている。

「……そんな風って、どんな風だよ」

代名詞だらけの応対。しかし、意味はきちんと通じる。
私が言った事に対して、霊夢はやれやれと首を振りながら溜息をつく。

「気づいてないの? あんたここに来てからずっと表情が変わんないのよ。迷子の子供みたいな、不安そうで、泣きそうな、そんな感じの目をしてるわよ」

はっはっ! そんなバカな!
そう笑おうとして顔の筋肉が強張ったように動かない事に気付いた。
笑おうとしても、まるで笑い方を忘れたみたいに顔が固まったままなのだ。

言われてみれば今日は一回も笑っていない気がする。
博麗神社に来る前から、ずっと。
目が覚めた時から、ずっと。

なんだ? なんだ? 私はいったいどうなっているんだ?

「そんな混乱しないでよ。どうせしばらくしたら効果が切れるんでしょ? 今日はもう家に帰って大人しくしてたらいいわ、そんな湿っぽい顔で神社に居られても困るし」

俯いて、考え込んでいる私の顔の前にマドレーヌを包んでいる袋が突き付けられる。
訳がわからなくて、マドレーヌの袋の横から霊夢の顔をのぞき見る。

「持って帰んなさい。甘いものでも食べれば元気になるわ」

そう言って霊夢は私の手にぎゅっと袋を持たせた。

















かさ、かさかさ、かさ。

足で落ち葉を踏み分けて、私は家路をたどっている。
飛んで帰る気分でもなくって、時間つぶしも兼ねて森の途中からは徒歩である。
手に持っている箒とマドレーヌの袋が少し邪魔ではあるがな。
思えばこうして景色を見ながらゆっくりと歩くのも久しぶりだ。

だが歩いていても自然と気になるのは、今日の出来事。

ろくでもない、魔法。結局なんなんだろう。

見た目は変わっていないし、魔法も使える、空も飛べる、弾幕ごっこだってやろうと思えばちゃんとできるだろう。
変化が起こっているのは私の内面にある、変なざわざわ感やちょっとしたいらつきだ。
後、味覚とかもおかしくなっている。
感情や感覚に狂いが生じる魔法。
こんな変化が起こるような魔法なんて、私に心当たりは全くない。
ていうかなんでこんな訳のわからん魔法を自分にかけたんだ?
分からん、分からん。
早く記憶が戻ればいいのに、そんな兆候はさらさらない。
断片的にでも思い出せばいいのに。くそ。こうなりゃショック療法だ。

立ち止まり、持っていた箒の柄で自分の頭をたたく。

ごつん。

…………あっつぅ~~っっ……! 強く叩きすぎた!
普段八卦炉から飛ばしている星が、私のつむった目の中でびゅんびゅん飛んで行った。
こんなときにも弾幕はパワーって事か。さすがだぜ私。
若干涙目になりながら、頭の中で負け惜しみを―――

「そう、弾幕はパワーなんだ。 そうだろ?」

頭の中で言った負け惜しみは、何故か口の上に滑り出ていた。
同意を求めるような口調で。隣に居る誰かに聞こえるよう。

誰も、いないのに。今、私は一人なのに。

「なんだよ……。結局記憶戻んないし、叩き損かよ」

ごまかすように私はさらに言葉を重ねて、両手にぎゅっと力を入れる。
今感じた違和感を、渇望を、空虚さを、振り切るために。

唇を噛んで俯いていた私に柔らかな風が近づいて、私の金色の髪を赤い光の中で踊りに誘う。

ふと気づけば博麗神社を後にして、だいぶ時間が過ぎていた。
木の隙間から見える太陽の光は西へと傾き、空は赤と金色で覆い尽くされている。

明日へと向かう為の休息を得る太陽。
光が織りなす赤と金色のグラデーション。
梢から私の肌をオレンジに染める暖かい夕日。
緩やかな風に揺れ歌を奏でる若葉達。

単純で素朴だけど、綺麗で美しい。

だが今の私はそう感じない。
頭で理解はできる。綺麗だな、暖かいな、美しいな。
しかし感情が動かない。
感覚が動かない。

心が、動かない。


だって、私は今。

私は今、足りないんだ。

足りない。
足りない。
全然足りない。

思えばずっと足りなかった。
博麗神社でも。
紅魔館でも。
家で紅茶を飲んでる時でも。

あの魔法を使った時からずっと、ずっと足りなかったんだ。

息が荒くなる。
私の足が自然と家に向かって駆けだしていたせいだ。
箒も、マドレーヌの袋も、両手に抱き抱えて一目散に走る。
相棒である帽子のつばが、向かい風によってはためいて、耳元でうるさい抗議をあげている。
そんなに急がなくてもいいじゃないか、もう、お前も気づいたんだろうって。

うるさい、うるさいっ。

抗議に応えるように帽子を目深にかぶり直す。
のどが痛い、息が苦しい。目が熱い。
勝手に目から雫が流れて、頬を伝う。
それを手で乱暴にぬぐう。

苦しい。苦しいんだよ。本当に、苦しいんだ。

太陽が眠りに着く直前、夜と夕暮れの中間地点。
徐々に闇が広がり効かなくなっていく視界の中に浮かび上がる、たったひとつの光。
家が見えてくる。ゴール地点だ。

もうすぐだ。もうすぐだから。

自分を励ますように、叱咤するように声にならない声で呟いて必死で足を動かす。
光のともる家に全ての答えがあるから。


ゆっくりと止まる。
目の前にあるのは家のドア。
ぜぇぜぇという呼吸音と上下運動を頼まれもせずにやる肩、きっと今の私は笑ってしまうくらいひどい状態だろう。
だがそんなのは気にならない。

手を伸ばしてドアノブを回す。
はやる気持ちと反対に、ゆっくり、そうっと。

薄暗闇に慣れてしまった目に、部屋の光が飛び込んできて思わず目をつぶってしまう。



「あら、魔理沙、いらっしゃい」



聞こえてきた声が耳を打つ。
足りなかった全てを埋めてくれる、魔法の声。

「――――アリス」

ドアノブを握ったまま微動だにしない私に向かってアリスが部屋の奥から近づいてくる。
いつも通り出迎えるために。

「町での用事が早く終わったから、これからあなたの家に行こうと思ってたのよ。タイミングばっちり……って、魔理沙、どうしたの?」

怪訝そうに私の事を見るアリス。
当然だ。今の私は森を全力疾走した後だ。
ほこりまみれ、葉っぱまみれ、切り傷や擦り傷もどきをそこかしこにこさえている。

「何か、あったの?」

アリスが私の前に立って、そっと目をのぞきながら声をかける。

「アリス!」
「きゃっ」

思わず私はアリスを抱きしめる。
ドサッという持っていた荷物が落ちる音がする。
箒は大丈夫だけど、マドレーヌは少しつぶれちゃうかな。
でも今はそんな事どうでもいい。ただアリスを抱きしめたい。存在を体全体で感じたい。

「もう、急にどうしたっていうのよ」

急に抱きついたせいか、軽く怒ったようにアリスが言う。
でもその手は抱きついた私の背の上を、優しくゆっくりと往復している。

あぁ、これだ。これが足りなかった。

アリスという存在が、ずっとずっと足りなかった。

アリス、ごめん。本当に、ごめん。
私は自分で自分に魔法をかけた。


『恋人の記憶を封印する魔法』を。


アリスと恋人同士になってから何気ない日常がきらきら輝いて、楽しくて仕方のない毎日で。
頬笑みあって、怒りあって、笑いあって、いがみあって、分け合って、また笑いあう日々。
つなぎ合える手が、見つめあえる目が、抱きしめあえる体が暖かくて愛おしい。

そんな中でふと思ってしまったんだ。
付き合い始めてから少し背が伸びた私と、変わらないアリス。
私とアリスは人間と妖怪。
寿命が来れば私はアリスよりも先に逝くだろう。
その時にアリスは、笑っていられるのだろうか?
恋人の死という現実を抱え込んでいきていくのだろうか?

私はアリスに幸せに生きてもらいたい。どんな時でも笑っていないと嫌だ。
例え私が居なくなったのだとしても。

ならばどうすればいいのだろう。
考えたさ。おおいに考えた。アリスのためなんだから。
そして結論を導いた。

幸せに生きるために『恋人の記憶』が重荷になるならば、私が死ぬ時にアリスから私の記憶を消せばいいんじゃないかって。

もちろんこれが正しいなんて思っちゃいない。ただ、一つの実行案としてはありだ。
恋人から忘れられるのはつらいけれど、そうすればアリスが幸せになれるのなら仕方が無い、許そう。あぁ、大人だなぁ、私。アリスには秘密にしておこう、怒られるかもしれないし。

軽い気持ちでそう思った。

まず、物は試しだ。自分の体で試してみよう。
パチュリーの所からたくさん本を借りて、魔法の森を駆けまわって、徹夜で魔法式を組んで。
そうして練り上げた魔法陣。『恋人の記憶を封印する魔法』。
もちろん実験だから効果は半日、でも試すには十分だ。

そして、今日、アリスが町へ出かける予定があったから、早速やってみる事にした。
記憶を封印する魔法だから、『魔法を使った』事自体を忘れる可能性があるので自分宛てにメモも残した。
万全の態勢で挑んだ。

成功だった。これ以上ないくらいに成功だった。
魔法は遺憾なく効果を発揮し、私はアリスの事を半日の間すっかり忘れていた。
魔法自体の出来としては何の文句もない。花丸さ。

でもダメだった。

アリスの記憶を失った半日間は、それはそれはひどいものだった。
アリスという土台を失った私の心は、たやすく崩れる砂の楼閣のようにもろいものになっていた。
大きくなっていく感覚と感情の狂い。動かない表情。正体不明の違和感。
それはきっと自分の心が悲鳴をあげていたからだ。叫んでいたからだ。
苦しいよ、苦しいよ、お前はなんてことをしてくれたんだ、と。
その声を私はずっと感じ取っていた。

でもなぜ自分の心が軋んでいるのか、気づく事は出来なかった。私が無意識に求めるものがなんなのか、悟る事は出来なかった。
魔法はあまりにも完璧だったんだ。

だから、ただ心があげる悲鳴を聞き続けるしかなかった。これは、地獄だ。

美鈴と咲夜に気づかわれ。
パチュリーに驚かれ。
霊夢に心配された。
いつもの私とはかけ離れた姿だったろう。
そんな風にしてしまう魔法をアリスに、軽い気持ちとはいえ少しでもかけようと考えた自分の馬鹿さ加減に、なんとも言いようのない怒りを感じる。

パチュリーが魔法を散々こき下ろしたのも、今なら分かる。

あの時パチュリーに言われた、本の事。あれはきっと、私への忠告。
アリス・マーガトロイドというページを破られた、霧雨魔理沙という本は、その存在が揺らいでしまうほどの大ダメージを受けた。
その上私は自分の都合でアリス・マーガトロイドという本から、霧雨魔理沙というページを破ろうとも考えていた。

――――本を破るなんて真似よしてちょうだい

あぁ、全くだ、言われるまでもない。そんな真似、金輪際するもんか。


ごめんアリス、こんな自分勝手で、馬鹿な私で本当にごめんなさい。


口に上る事のない謝罪を込めて、アリスを抱きしめている両腕に力を入れる。

「苦しいってば」

くすくすと笑いながら、抗議するように私の背中をとんとんと叩く。
最後にぎゅっともう一度だけ強く抱きしめて、そっと体を離すとアリスは苦笑いのような、困ったような顔をしていた。

「本当にどうしたのよ? そんなにぼろぼろで。しかもいきなり抱きつくし」
「いや、なんとなく抱きしめたくなってな。猛る力を両足にこめて、急いでアリスのところにはせ参じたんだよ」

ぐっと言葉に詰まり照れるアリス。にやっとした笑みを浮かべる私。
いつものやり取りが、いつも以上に幸せで、嬉しい。
私もようやっと本調子に戻り始めたようだ。

「な、なら飛んでくればいいじゃない。わざわざ走ってくる事無いでしょ、箒もあるのに」
「いやー、アリスに会いたい気持ちが爆発しそうでな。体を動かしてないと本当に爆発するかもしれなかったんだぜ」
「……っ! いい加減な事言って、もう……。とりあえず上がったら? 夕飯前だけど、のど乾いてるなら紅茶入れるわよ」
「おう、悪いな」

そう返事をすると、アリスはそのまま台所へ行き紅茶の準備を始める。
アリスはクールに振舞おうとしているが、頬を染めているのがまる分かりだ。

その姿を見ながら私は思う。

アリス、ごめんな。
私はいつか死ぬ。
人間だから別れは必ずやってくる、避けられはしないのだ。
その時、アリスは泣くかもしれない。傷つくかもしれない。絶望するかもしれない。
私が一緒にそばに居て支える事も出来ない。
でも、その事実から目をそむけないで乗り越えてほしい。
目をそむければ今日の私みたいな、酷い結果になってしまうかもしれないから。

それに、アリスが笑っていられるように、私もできる事を精一杯やる。
記憶を封じるという案と一緒に考えたもう一つの案。

アリスをとんでもなく幸せな記憶で一杯にして、私が居なくなった後でも幸せパワーで笑っていられるようにする。

パワーが信条の私だ。
記憶を封じるなんて小手先よりもこっちの方があってるし、きっと正しい。
アリスを幸せの砂糖漬けにして、涙なんか乾かしてやるんだ。

この案はきっと時間がかかるだろう。死ぬまでかかるだろう。
でもそれでも私はやり遂げる。あきらめの悪さは折り紙つきだし。

それになにより私は。


「どうしたの、いつまでも玄関で立ってて。紅茶、もうすぐできるわよ」
「おう、ありがとな。今行く。あ、そうだアリス」
「何?」

机にティーカップをそろえながら、私の方を振り向く私の恋人。


「愛してるぜ、アリス」


何より私はアリスの事が大好きだから。

「~~~……っ、ちょ、直球すぎよ、ばか」

アリスが顔を真っ赤にして急いで背中を向け、私への文句を口にする。
でもその口元が嬉しそうに笑っていたのを見逃す私じゃない。
そう、こうやって少しずつ幸せをアリスに降り注いでやろう。
いつか来るだろう未来でも、アリスが笑っていられるように。

私は床に落ちた箒と袋を拾い上げた。
箒はそのまま壁に立てかけて、マドレーヌが入った袋を抱えてアリスの方へ向かう。
紅茶のいい香りが私を包む。
今日はほとんど何も食べてないからお腹も減ったし、夕飯前だけどマドレーヌもつまもうかな。アリスと一緒に。

そのあとで、アリスをどうやったら幸せまみれに出来るか考えるとするか。





とりあえず今は咲夜がくれたハート型のマドレーヌと一緒に、紅茶を飲もう。





今度の紅茶はきっと、飛びきり上等の味がするだろうから。
















以下後書き

     
『恋、それは必ず別れが来るからこそ燃え上がるものよ』    ウ・サン・クサイナユ・カリン氏の発言

というのは冗談でちょっと寿命差をテーマに何か書いてみたかったのです。
ただどっちかが死んじゃうような寿命差だと書いてる時に鬱になりそうなので、こんな感じになりました。
人生初の一万字を軽く超える長文……自分頑張った。
とりあえずマリアリはキャッキャウフフしてればいい。そして周りの人間を砂糖まみれにしてしまえばいい。
タグにマリアリって入れちゃうとネタばれになるから泣く泣く削ったのはいい思い出。

拙い作品ですがここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
マリアリが俺のじゃすてぃいいいいいす!



追記


そういえば『遠回りな答えの出し方』の感想で、【力づくで正解にするのが、魔理沙の答え】という風に言って下さった方がいました。
この感想を読んだ時に、私は目からうろこの気分でした。

正解を導きだすのではなく、正解をもぎとるのが私が書きたかった魔理沙なんだなぁ、と。

時に読者様の方が、作者の言いたい事をより正確に把握できるんですね。


相当前の話ですし、ここは辺境地なのでこの感想を下さった方が読むことはほぼないと思いますが、この場で心よりの感謝を表したいです。
もちろん他の感想を下さった方たちにも深い深い謝意を表します。


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やっぱりだ。なんかおかしい。
何かはわからないがおかしいものはおかしい。


紅茶を飲んでいたティーカップを、受け皿へカチンと乱暴に戻す。

なんだって言うんだ。なんだってこんなに――――



「……なんだってこんなにまずいんだ」


私のほかに誰もいない空間に向かって、こぼすように独り言をつぶやく。
まずい。
紅茶がまずい。

いや、正確に言うとまずいわけじゃない。
何か足りないのだ。何か物足りない、今一つの味なのだ。
例えばそれは、お茶を欠いた貧乏巫女、胡散臭さのないスキマ妖怪、白黒じゃない私、すなわち霧雨魔理沙のような物足りなさなのだ。

首をひねって原因を探るが、いつも通りにいれた記憶しかない。
茶葉もこのまえ新しくしたし、紅茶の抽出時間も完ぺきだ。

だとすると原因は……。

「やっぱこれしかないか」

机の上に置いてある紙をつまみあげて、そこに書いてある字をもう一度読み返す。

『私へ
 記憶が飛ぶかもしれないから一応書いておく。
 今魔法の実験を私の体へ行っている。
 とりあえず半日程度で効果が切れるようになってるから、そのまま過ごせ。
                             霧雨 魔理沙』

この前衛的なくせ字は明らかに私が書いたものだ。サインもあるし。
どうやら私は自分自身の体へ、何かの魔法をかけたらしい。
『何か』というあやふやな状態なのは、手紙で数時間前の私が危惧していた通り、魔法を行使したおかげで多少記憶が吹っ飛んでいるせいだ。
先程目が覚めると、私は部屋の床に倒れ伏していて、その床には見覚えのない魔法陣が書き込まれていて、なんでこんな事態になっているのかさっぱりわからなかった。
とりあえず立ちあがって部屋の中を見回してみると、机の上に自分で書いたあの手紙を発見したのだ。
なるほど、そうかいつもの実験か。
その場で納得した私は、埃っぽい床で倒れ伏していたためののどのイガイガを直すべく紅茶を入れてただ今ティータイムの真っ最中というわけだ。

しかし、しかしだ。
意識を取り戻した最初はぼ~としていたため気が回らなかったが、落ち着いてみるとなんだか落ち着かないのだ。
文脈がおかしいわけではない。
なんかおかしい。なんかざわざわする。
ここが決定的におかしいのだと断言はできないのだが、魔法使いの勘というか人間としての感覚というか、そういうものがおかしいと微かに訴えている気がするのだ。

これはあれだろうか。
ひょっとして魔法の行使中どっかで失敗したんだろうか。
自分の体で実験したのだから絶対安全だとは思うが、万が一、いや億が一、失敗していたらまずい事になりはしないか。
あの手紙があったから確かに混乱しないで済んだが、どんな魔法を行使したのか書いておいてほしかった。
実験を行う前の私の迂闊さを罵りたくなってくる。
やい、霧雨魔理沙! おまえは普段手を抜きすぎる! そして付け加えさせて貰えば、身の回りを片づけなさすぎる! そのせいであの魔法陣の資料がどの山なのかさっぱり分からないじゃないか! 記憶が飛んでもどんな魔法を使ったのか調べる事も出来ないなんてな! はーっはっはっはっ、いい気味だ!

……止めよう、むなしくなってきた。

そう、とりあえずざっと考えて八方ふさがりだ。
あっちもこっちも塞がってるが、この違和感は自分じゃどうする事も出来ない。
となると。

「専門家に聞きに行くか。こういうの得意そうだし」

脳裏に年中動くことのない、服が紫色で、たまに動きすぎると顔面も紫色になる人物を思い浮かべる。

思い立ったら即行動。
残っていた紅茶を一息で飲みほし、私は帽子をかぶるために立ち上がった。


















箒でひとっ飛びに湖を超えてみれば、目的地である紅魔館が見えてくる。
前から思っているけど、いくら名前がスカーレットだからって館まで赤い色で統一するとか趣味が悪いとしか思えないな。
それとも吸血鬼の美的感覚って人間と違うのかもしれない。
赤色を見てると癒されちゃう! だって吸血鬼だもん★、ってことなんだろうか。
うん、なんか友人関係を結んでいていいのか疑いたくなる趣味だ。
やっぱり赤よりも白黒、時代は白黒だ、白黒。目に優しいし、パンダも可愛いし、白黒は最高じゃないか。

取り留めのない事を考えつつ、私は紅魔館の門から少し離れた所にゆっくりと下降して降り立った。
いつも通り門番を吹っ飛ばして入ってもよかったのだが、今日は本を借りに来たわけじゃないから『客人』として紅魔館を訪れる事にする。
弾幕ごっこの気分でもないし、なんとなく気分が良くないのも相変わらずだから。

歩きながら門へと向かっていくと、ゆったりと吹いている風に髪を遊ばせながら腕を組んで、門の前に仁王立ちしている美鈴の姿が見えてきた。

でっかい鼻ちょうちん付きの。

あれよだれもたれかけてるんじゃないか? 完璧寝てるよな。
それでいて多分後ろからみたらきちっと門を守っているように見えるんだろう。
前に『咲夜さんにばれないように居眠りし続けて幾星霜……私は究極の寝方を身に付けた!!』とか無駄に壮大に語られた気がする。私が言うのもなんだが、仕事しろよ。

わざと大きい足音をたてながら近づいていくと、首をガクッと揺らして美鈴が目を開ける。
頭が回ってないのか、目をぱちぱちさせてキョトンと私の顔を見つめる。

「………………魔理沙?」
「そうだぜ」
「魔理沙、よね」
「だからそうだって。いい加減起きろ、仕事しろ」

じれったいって言うんだ。今日は虫の居所があんまりよくないんだぞ。
箒の柄で目の前の寝ボケ門番の鳩尾を思いっきり付いてやる。

「ぐほぅっ!?」
「さっさと通せよ、今日はご丁寧にも客人として紅魔館に来たんだぜ?」
「……ぐ、く……きゃ、客人はいきなり攻撃しないと思うんだけど……」
「どこぞの門番が寝ボケてるのが悪いんじゃないか? ナイフで針ねずみになる前に目を覚まさせてやったんだ、ありがたく思え」
「げほっ……寝ボケてたわけじゃなくて魔理沙がいつもと違ったから、おかしいなって」
「今日は弾幕ごっこの気分じゃないんだよ。とにかく早く紅魔館に入れろって。それとも本気出した私と戦いたいのか?」
「いや、そういう意味じゃ……まぁいいや。とにかく客人としてなら、どうぞお通り下さい」

門の前からひょいっと横にずれて私に道を譲る美鈴。
そうそう、最初から素直にそうしてればいいんだよ。

「ところで今日は本当にどうしたの?」
「ちょっとパチュリーに野暮用さ。本を借りに来たわけじゃないから安心しろ」

ただでさえ気分が良くないうえに、早くパチュリーの所に行きたい私の受け答えは自然とぶっきらぼうになる。
その様子を感じ取ってか美鈴はそっか、と短い返事を寄こしてまた門番のための定位置に戻って行く。

「ねぇ、魔理沙、誰かと喧嘩したとかなら早めに謝る方がいいわよ?」

去り際に振り向きながら美鈴が言う。
喧嘩? あいにくとそんなもんした覚えはさらさらない。
なんでそんな事言われなきゃいけないのか意味不明だ。
寝起きだから、こいつの頭の中で夢と現実とがごっちゃにでもなっているのかもしれない。
私は適当にそうだな、と返して紅魔館に足を進めた。

















「よう」

私が背中から声をかけたのは動かない紫もやし、もとい動かない大図書館と言われているパチュリーだ。
見ようによっては機敏な動きともとれなくもない速度で、眠りかけのような半眼を本から上げて私の方に顔を向ける。
そのまま二、三度私の顔を見ながら瞬きをする。
これは……驚いてるんだよ、な? どうもパチュリーの表情は分かりにくくていけない。
もっと表情筋動かせよ。

「今日は随分おとなしい登場じゃない。外で槍でも降ってるのかしら」
「残念ながら完璧に清々しい晴れ模様だぜ。どこかのひきこもりが外に出たらで日光で倒れそうになるくらいのな」

こんなほこり臭い所で引き籠っているんだから、貧弱になるのも当然だと思う。
私みたいに日光の下で元気よく飛びまわればいいのだ。
そしたら進化してパチュリーから筋肉ムキムキのマチョリーに……気持ち悪いな、想像するのやめとこ。

「それで、なんなの? 本を盗みに来たって感じじゃないわね。何か聞きたい事でもあるのかしら」
「ビンゴ。さすがは百年の魔女様、いい勘してるぜ」
「魔理沙に褒められても嬉しくないわね」
「褒め言葉は素直に受け取っておくものだぜ、たとえお世辞でもな」
「ご託はいいわ。聞きたい事って何なの?」
「と、そうだった」

私は今日の朝からの出来事を一通り説明して、机の上に残してあった私のメモと床の魔法陣を書き写した紙をパチュリーに手渡した。

「とまぁ、そんな感じで。変なざわざわ感も途切れないし、若干心配になったからちょっと助言をもらいに来たってわけだ」

内心で感じている不安を押し隠し、軽い言葉で締めくくる。
そんな私の不安をよそにパチュリーは話を聞いてる間からずっと無言を保ち続けている。
今は魔法陣を書き写した紙をじっと見つめている。

きっと色々な知識を総動員して魔法陣の解析をしているのだろう。
なんだかんだいってパチュリーは人に頼まれると真面目にやっちゃうタイプだしな。
しかしここまで表情が動かないうえに、体まで動かないとなるとまるで地蔵みたいだ。
地蔵パチュリー。
なんか知識がたまる地蔵とかで参拝客きそうじゃないか。
パチュリー地蔵様ー、ご利益下さーい。なんちゃって。

と、計ったようなタイミングでパチュリーが私の方に目を向ける。

「おぉう!?」
「何おどろいてるのよ」
「あ、あぁ、いやなんでもない。で、どうだ。その魔法陣どういう魔法かわかりそうか?」
「魔理沙」

表情を崩さず、なんでもないことのようにパチュリーは答えを返す。



「あなた死ぬわよ」




………………は?
思考能力が停止する。
なんだ、なんて言ったのだ、この魔女は。
死ぬ? この私が死ぬだって? そんなバカな。そんな事あるはずがない。

「お、おい、なんだよそれ」
「こんな愚かな魔法を自分にかけるだなんてね、私の魔理沙に対する評価は買いかぶりだったのかしら。愚かしいにも程がある。まぁ助かりたいのなら方法がないわけじゃないけども」

そこで言葉をとぎって視線を注いでくるパチュリー。
ゴクリと自然と喉が鳴る。
助かる方法、それさえあれば―――――

「まずはじめにドロワーズを頭にかぶった状態の下着姿で『私は下着仮面! 幻想郷の下着を守るもの! 夢と希望は下着の中に!』と叫びながら幻想郷中を飛び回って」
「オーケー、ゴートゥーヘル。紫もやし」

高速で右手に構えた八卦炉に力を込めていく。

「まちなさい、魔理沙。人の話は最後まで聞くものよ」
「うるさい! 人で遊びやがって! 言っていい冗談と悪い冗談があるだろうが!」
「心外ね、冗談じゃないかもしれないじゃない」
「冗談じゃないのか?」
「馬鹿ね、冗談にきまってるじゃない」

ダメだ、頭の血管切れそうだ。
とりあえず怒りのせいで迸る熱いパトスを、マスタースパークにして放出しておく。
……ちっ! こういう時に限って普段からは信じられない速さで椅子ごと横によけやがる。
あまりの速さだったせいかパチュリーの残像が出来て、その残像が『こぁー!?』という叫び声とともにマスタースパークで吹っ飛ばされていく。
ん? 残像じゃなくて身代わりの術か? 魔女のくせに忍者ってなんだそれ。
どーんと壁にマスタースパークがぶつかる音とともに、目の前でパチュリーが溜息をつく。

「全く、落ち着きなさいよ、はしたないわね」
「あんなタチの悪い冗談言う方がよっぽどはしたないと思うんだがな!」
「あんな下らない魔法陣見せられれば、タチの悪い冗談の一つや二つ言いたくなるわ」
「は?」
「さっき言った死ぬって所は冗談だけど、魔理沙を愚かだと思ったのは本当よ。こんな魔法陣を実行するなんて馬鹿じゃないかしら?」
「ちょ、ちょ、ちょい待て。どういうことだ、あの魔法陣の事そんなに詳しくわかったのか? どんな魔法なのか説明してくれよ」

普通、魔法陣というのは組み上げるのに多大な時間と労力をかけるもので、基礎的な魔法陣の上にさらにオリジナリティの要素を付け加えるとその効果の表れ方はまさに無限大となる。
特に私は自己流を激しく追及するため時には基礎すら吹っ飛ばして、効果を強める場合がある。
そのため上手くいくときはいいが失敗すると副作用みたいなものが出る時もある。
今回みたいに記憶が飛ぶとかな。

ま、それは置いておいて、そういう風に組み上げられた魔法陣の解析を他人がやる場合それなりの時間がかかるものなのだ。

だからさっき『死ぬ』って言われた時にもう少し冷静だったら即座に『嘘だろ』って返せたのに。
くそ、今日の私はダメだ。

「分かるわよ。この魔法陣、効果が半日で切れるような組み上げられ方だから結構簡素化されているし。後はここ最近のあなたが盗んでいった本の傾向とか、今のあなたの状態と様子から複合的に考えていけば、大体はね」
「そうか、良かった、さんきゅっ! それでどういう魔法なんだ?」
「それは教えない」

さらりと拒否の言葉を口にするパチュリー。
あまりにも自然に断られたため、『おう、そうか』と返事をしそうになってしまった。

「な、なんでだよ!? 別に教えてくれてもいいじゃないか!」
「嫌よ。毎回本を盗まれているのと、こんな愚かな魔法陣を見せてくれたお礼だとでも思って頂戴」
「本は借りてるだけだ、死ぬまでには返すさ。……というかそんなにダメな魔法なのか?」
「えぇ、とっても。なんか魔法使いとしてどうのこうのというよりも、人間として終わってる感じね」
「そ……そこまで」
「まぁ、半日で効果は切れるんだし、多分身体への害はないから安心するといいわ。飛んだ記憶もそのうち戻るでしょ」

がくりとうなだれる私を尻目に、話は終わりだとでもいうようにパチュリーは読みかけの本へ視線をむける。
こうなってしまったら泣こうがわめこうが絶対にこの魔法がなんなのかなんて教えてくれないだろう。
パチュリーは頑固者だからな。こうと決めたらてこでも動かない。
精神的な意味でも、物理的な意味でも。なんせパチュリー地蔵だから。

なんとなく釈然としないが恐らく効果が切れてみればどんな魔法だったか分かるだろう。
もしくは魔法が切れる前に記憶が戻るかも知れない。
そう前向きに考えてとりあえず図書館から出て行こうと歩き始めると、パチュリーから声がかかる。

「ねぇ、魔理沙。ここは図書館よ。大量に本があるわね」

当たり前のことを口にのぼらせる。
何言い出したんだ、こいつ。
一応足を止めてパチュリーの方へ向き直ると、パチュリーの目線は相変わらず本の上だった。

「本、特に物語とかが顕著だけれど、ああいうものは途中のページを破られたりすると意味が通じなくなる。そのページに物語の根幹をなす大切な事が書いてあればあるほどね。酷い時にはたった数ページ破られただけでその本の存在価値が急落してしまう場合があるわ」

私は何となく口をはさめなくて、ただ黙って聞いている。

「作者自身が気に入らないと破り捨てるのならまだいいわ。自分で綴った物語だもの、自分の好きなようにする権利がある。でも他人が勝手に都合が悪いからとページを切り取るのは、愚かしい行為だわ。例えそれがその物語をつづった作者のためになるかもしれないとしても、よ。余計なお世話ってことも有り得るし、その物語に対する冒涜。なぜそんな事をしたのかという理由は重要じゃないのよ。要はその行為自体が罪なんだもの」

何が、言いたい。
そう視線に圧力を込めてパチュリーの方をじっと見つめる。
その視線に気づいたか気付かないのか、パチュリーは本を見たまま溜息をつく。
そして私の方へ顔を向けた。

「私が言いたい事はそれだけ。本を破るなんて真似よしてちょうだいって事よ」

がくっと体の力が抜ける。
なんだっていうんだ、そんな当たり前の事をいいたいがためにわざわざ呼び止めたっていうのか。
不肖霧雨魔理沙、本を借りても破るなんて真似一度もした事がない。
そこまでひねくれてない。

「おいおい、私は本を破ったりなんかしないぞ? 本は大切なもんだからな、借りはするけど破損なんてさせないぜ」
「そうね、ならいいのよ。あなたならやりかねないから、先に忠告しただけだし」
「む、しないぞそんなこと! 絶対にな!」
「はいはい。じゃあね、魔理沙。次からも今日みたいな大人しい来訪を期待するわ」

パチュリーはそう言ってそのまま読書に没頭し始める。
なんて言うマイペースなやつなんだ。
このイライラ感は次回の訪問時にマスタースパークを3発くらい打ち込む事で解消することとしよう。

足音高く図書館を後にする。
さて、これからどうするか。
大丈夫だと太鼓判を押されたが、一人で居るとなんか不安に駆られるしな。

よし、ここはいつも暇してる巫女んとこでも行って時間をつぶすか。

















「おーす、霊夢。邪魔するぜ」

緩やかな午後の時間帯、霊夢は特別な用事がない限り、掃き掃除をしているか縁側でお茶をしているか昼寝をしているかのどれかである。
私は鳥居の前に降り立って、境内を通って庭に回り込む。

「あら、魔理沙じゃないの」

すると縁側には私の予想通りお茶を飲みながらボーっとしている霊夢がいた。
青空に紅白、色合い的には何とも風靡である。
今一つ物足りない気もするが、好きな色の取り合わせなので合格点をやろう。
風に揺られる霊夢の赤いリボンが何かを彷彿とさせるが、なんだったろうか。

「今日はどうしたのよ」
「いや、ちょっとな、遊びに来ただけさ。時間つぶしにな」

ふーんと頷いて、霊夢は私の事をじろじろと見てくる。

「なんだよ、なんか顔についてるのか?」
「別にそういうわけじゃないけど、ね」

と、私の上をさまよっていた視線が、私の手に握られている袋にたどり着く。
さすが貧乏巫女、目ざといな。
手を持ち上げて袋を霊夢の目の前で揺らす。

「さっき紅魔館に行ってきたんだが、帰りに咲夜に貰ったんだよ。マドレーヌって菓子らしいぞ」
「へぇ、ますます珍しい。咲夜があんたにお土産渡すなんてね」
「なんか大人しい来訪は歓迎とかなんとか。ただ大人しい私はイメージに合わないから、さっさと元に戻れって言ってたな。別に弾幕ごっこする気分じゃなかっただけなんだがな」

言いながら霊夢の横に腰を落とす。
ぽかぽかの陽気は何ともすごしやすい。
いつも通りのセルフサービスで、霊夢の横に置いてあった茶器からお茶を汲む。
その間霊夢はごく当然に袋の中を探ってマドレーヌを取り出している。
なんか知らんが、一人じゃ食べきれないくらい咲夜が包んでくれたから量もたっぷりあるし、いいんだけど。
そういえば『一人じゃこんな食べれない』って言ったら『どうせ二人で食べるんでしょ』と言われた。
私が霊夢のところに行くのが分かっていたのかな、さすが完璧で瀟洒なメイド様だぜ。

お茶を入れてゆっくりすすると、安い茶葉の香りがした。
やっぱり普段よりもまずく感じる。つーか酷い味だ。泥水じゃないだろうな。
ここのお茶は決して美味い訳ではないが、こんなにまずくはなかった気がする。
やっぱり魔法の効果は薄れていない。むしろ酷くなってないか? これ本当に半日で効果切れるんだろうな?

不安な思考をそらすように霊夢の方を見ると、何故か霊夢はマドレーヌを右手で顔の前に摘みあげたままじっと見つめている。
霊夢が即座に食べ始めないなんて珍しい。
大抵腹を空かしているから、お土産なんてあったら即効かぶりつくのに。
しかし、マドレーヌと霊夢か。響きが似てるな。
まどれーぬ、まどれいぬ、まどれいむ、まどれーむ、マドレーム!
味は微かなお茶味、紅白の二つ詰めで価格は200円とか。
博麗神社土産とかで売り出せばいけそうじゃないか?

「ねぇ、魔理沙」
「あ?」

明後日へ飛びかけていた思考を現実へ引き戻す。
霊夢は相変わらずマドレーヌを持ったまま見つめている。

「あんた今日様子変だわ。なんかあったの?」

ちょっと息がとまった。
やっぱり勘だけは鋭いな、この巫女は。

「さすが霊夢だ。ま、なんだ、ちょっと魔法の実験しててな。そのせいで変に見えるかもしれないな」
「ふーん。どんな魔法なのよ」
「それが魔法のショックで、魔法を使う前の記憶がちょっとあいまいでな」

おどけたように言って、内面を出さないように努力する。
こんなぐらぐらでゆらゆらする気持ちを霊夢に知られたくない、なんとなく。

「半日で効果は切れるから、今日の夕暮れくらいには効果がなくなるはずだ。だから後少しで元に戻る。そのころには記憶も元通りに戻ってるといいんだがな」
「そう、半日で効果が切れるならよかったんじゃない? なんかロクな魔法じゃなさそうだし」

ロクな魔法じゃない? なんで魔法の事を何にも知らない霊夢がそんなことわかるんだ。
そういえば同じような事をパチュリーにも言われたな。
人間として終わってる、愚かな魔法だって。
記憶にはないが魔法を自分にかけたのは間違いなく私なのだし、その魔法の事をこき下ろされるってことは馬鹿にされているって事だ。

「……失礼だな。魔法の事を知らないくせにロクでもないなんて言うな」
「そうね、私は魔法の事は知らないわ」

何故か弱弱しい反論になってしまった私に対して、霊夢は言葉を返す。
その手には相変わらずマドレーヌ。
気づけば霊夢の目は私の目をしっかりと見据えていた。

「でも、魔理沙の事は知ってる。あんたがそんな風になる魔法なんてきっとロクなもんじゃないわ」

言いきる霊夢。
一瞬呆然とする私。
そんな風? 今の私の感じてる違和感が霊夢にはわかったのか?
馬鹿な。そんな事一言たりとも話してないし、できるだけ普段の自分と変わらないよう振舞っている。

「……そんな風って、どんな風だよ」

代名詞だらけの応対。しかし、意味はきちんと通じる。
私が言った事に対して、霊夢はやれやれと首を振りながら溜息をつく。

「気づいてないの? あんたここに来てからずっと表情が変わんないのよ。迷子の子供みたいな、不安そうで、泣きそうな、そんな感じの目をしてるわよ」

はっはっ! そんなバカな!
そう笑おうとして顔の筋肉が強張ったように動かない事に気付いた。
笑おうとしても、まるで笑い方を忘れたみたいに顔が固まったままなのだ。

言われてみれば今日は一回も笑っていない気がする。
博麗神社に来る前から、ずっと。
目が覚めた時から、ずっと。

なんだ? なんだ? 私はいったいどうなっているんだ?

「そんな混乱しないでよ。どうせしばらくしたら効果が切れるんでしょ? 今日はもう家に帰って大人しくしてたらいいわ、そんな湿っぽい顔で神社に居られても困るし」

俯いて、考え込んでいる私の顔の前にマドレーヌを包んでいる袋が突き付けられる。
訳がわからなくて、マドレーヌの袋の横から霊夢の顔をのぞき見る。

「持って帰んなさい。甘いものでも食べれば元気になるわ」

そう言って霊夢は私の手にぎゅっと袋を持たせた。

















かさ、かさかさ、かさ。

足で落ち葉を踏み分けて、私は家路をたどっている。
飛んで帰る気分でもなくって、時間つぶしも兼ねて森の途中からは徒歩である。
手に持っている箒とマドレーヌの袋が少し邪魔ではあるがな。
思えばこうして景色を見ながらゆっくりと歩くのも久しぶりだ。

だが歩いていても自然と気になるのは、今日の出来事。

ろくでもない、魔法。結局なんなんだろう。

見た目は変わっていないし、魔法も使える、空も飛べる、弾幕ごっこだってやろうと思えばちゃんとできるだろう。
変化が起こっているのは私の内面にある、変なざわざわ感やちょっとしたいらつきだ。
後、味覚とかもおかしくなっている。
感情や感覚に狂いが生じる魔法。
こんな変化が起こるような魔法なんて、私に心当たりは全くない。
ていうかなんでこんな訳のわからん魔法を自分にかけたんだ?
分からん、分からん。
早く記憶が戻ればいいのに、そんな兆候はさらさらない。
断片的にでも思い出せばいいのに。くそ。こうなりゃショック療法だ。

立ち止まり、持っていた箒の柄で自分の頭をたたく。

ごつん。

…………あっつぅ~~っっ……! 強く叩きすぎた!
普段八卦炉から飛ばしている星が、私のつむった目の中でびゅんびゅん飛んで行った。
こんなときにも弾幕はパワーって事か。さすがだぜ私。
若干涙目になりながら、頭の中で負け惜しみを―――

「そう、弾幕はパワーなんだ。 そうだろ?」

頭の中で言った負け惜しみは、何故か口の上に滑り出ていた。
同意を求めるような口調で。隣に居る誰かに聞こえるよう。

誰も、いないのに。今、私は一人なのに。

「なんだよ……。結局記憶戻んないし、叩き損かよ」

ごまかすように私はさらに言葉を重ねて、両手にぎゅっと力を入れる。
今感じた違和感を、渇望を、空虚さを、振り切るために。

唇を噛んで俯いていた私に柔らかな風が近づいて、私の金色の髪を赤い光の中で踊りに誘う。

ふと気づけば博麗神社を後にして、だいぶ時間が過ぎていた。
木の隙間から見える太陽の光は西へと傾き、空は赤と金色で覆い尽くされている。

明日へと向かう為の休息を得る太陽。
光が織りなす赤と金色のグラデーション。
梢から私の肌をオレンジに染める暖かい夕日。
緩やかな風に揺れ歌を奏でる若葉達。

単純で素朴だけど、綺麗で美しい。

だが今の私はそう感じない。
頭で理解はできる。綺麗だな、暖かいな、美しいな。
しかし感情が動かない。
感覚が動かない。

心が、動かない。


だって、私は今。

私は今、足りないんだ。

足りない。
足りない。
全然足りない。

思えばずっと足りなかった。
博麗神社でも。
紅魔館でも。
家で紅茶を飲んでる時でも。

あの魔法を使った時からずっと、ずっと足りなかったんだ。

息が荒くなる。
私の足が自然と家に向かって駆けだしていたせいだ。
箒も、マドレーヌの袋も、両手に抱き抱えて一目散に走る。
相棒である帽子のつばが、向かい風によってはためいて、耳元でうるさい抗議をあげている。
そんなに急がなくてもいいじゃないか、もう、お前も気づいたんだろうって。

うるさい、うるさいっ。

抗議に応えるように帽子を目深にかぶり直す。
のどが痛い、息が苦しい。目が熱い。
勝手に目から雫が流れて、頬を伝う。
それを手で乱暴にぬぐう。

苦しい。苦しいんだよ。本当に、苦しいんだ。

太陽が眠りに着く直前、夜と夕暮れの中間地点。
徐々に闇が広がり効かなくなっていく視界の中に浮かび上がる、たったひとつの光。
家が見えてくる。ゴール地点だ。

もうすぐだ。もうすぐだから。

自分を励ますように、叱咤するように声にならない声で呟いて必死で足を動かす。
光のともる家に全ての答えがあるから。


ゆっくりと止まる。
目の前にあるのは家のドア。
ぜぇぜぇという呼吸音と上下運動を頼まれもせずにやる肩、きっと今の私は笑ってしまうくらいひどい状態だろう。
だがそんなのは気にならない。

手を伸ばしてドアノブを回す。
はやる気持ちと反対に、ゆっくり、そうっと。

薄暗闇に慣れてしまった目に、部屋の光が飛び込んできて思わず目をつぶってしまう。



「あら、魔理沙、いらっしゃい」



聞こえてきた声が耳を打つ。
足りなかった全てを埋めてくれる、魔法の声。

「――――アリス」

ドアノブを握ったまま微動だにしない私に向かってアリスが部屋の奥から近づいてくる。
いつも通り出迎えるために。

「町での用事が早く終わったから、これからあなたの家に行こうと思ってたのよ。タイミングばっちり……って、魔理沙、どうしたの?」

怪訝そうに私の事を見るアリス。
当然だ。今の私は森を全力疾走した後だ。
ほこりまみれ、葉っぱまみれ、切り傷や擦り傷もどきをそこかしこにこさえている。

「何か、あったの?」

アリスが私の前に立って、そっと目をのぞきながら声をかける。

「アリス!」
「きゃっ」

思わず私はアリスを抱きしめる。
ドサッという持っていた荷物が落ちる音がする。
箒は大丈夫だけど、マドレーヌは少しつぶれちゃうかな。
でも今はそんな事どうでもいい。ただアリスを抱きしめたい。存在を体全体で感じたい。

「もう、急にどうしたっていうのよ」

急に抱きついたせいか、軽く怒ったようにアリスが言う。
でもその手は抱きついた私の背の上を、優しくゆっくりと往復している。

あぁ、これだ。これが足りなかった。

アリスという存在が、ずっとずっと足りなかった。

アリス、ごめん。本当に、ごめん。
私は自分で自分に魔法をかけた。


『恋人の記憶を封印する魔法』を。


アリスと恋人同士になってから何気ない日常がきらきら輝いて、楽しくて仕方のない毎日で。
頬笑みあって、怒りあって、笑いあって、いがみあって、分け合って、また笑いあう日々。
つなぎ合える手が、見つめあえる目が、抱きしめあえる体が暖かくて愛おしい。

そんな中でふと思ってしまったんだ。
付き合い始めてから少し背が伸びた私と、変わらないアリス。
私とアリスは人間と妖怪。
寿命が来れば私はアリスよりも先に逝くだろう。
その時にアリスは、笑っていられるのだろうか?
恋人の死という現実を抱え込んでいきていくのだろうか?

私はアリスに幸せに生きてもらいたい。どんな時でも笑っていないと嫌だ。
例え私が居なくなったのだとしても。

ならばどうすればいいのだろう。
考えたさ。おおいに考えた。アリスのためなんだから。
そして結論を導いた。

幸せに生きるために『恋人の記憶』が重荷になるならば、私が死ぬ時にアリスから私の記憶を消せばいいんじゃないかって。

もちろんこれが正しいなんて思っちゃいない。ただ、一つの実行案としてはありだ。
恋人から忘れられるのはつらいけれど、そうすればアリスが幸せになれるのなら仕方が無い、許そう。あぁ、大人だなぁ、私。アリスには秘密にしておこう、怒られるかもしれないし。

軽い気持ちでそう思った。

まず、物は試しだ。自分の体で試してみよう。
パチュリーの所からたくさん本を借りて、魔法の森を駆けまわって、徹夜で魔法式を組んで。
そうして練り上げた魔法陣。『恋人の記憶を封印する魔法』。
もちろん実験だから効果は半日、でも試すには十分だ。

そして、今日、アリスが町へ出かける予定があったから、早速やってみる事にした。
記憶を封印する魔法だから、『魔法を使った』事自体を忘れる可能性があるので自分宛てにメモも残した。
万全の態勢で挑んだ。

成功だった。これ以上ないくらいに成功だった。
魔法は遺憾なく効果を発揮し、私はアリスの事を半日の間すっかり忘れていた。
魔法自体の出来としては何の文句もない。花丸さ。

でもダメだった。

アリスの記憶を失った半日間は、それはそれはひどいものだった。
アリスという土台を失った私の心は、たやすく崩れる砂の楼閣のようにもろいものになっていた。
大きくなっていく感覚と感情の狂い。動かない表情。正体不明の違和感。
それはきっと自分の心が悲鳴をあげていたからだ。叫んでいたからだ。
苦しいよ、苦しいよ、お前はなんてことをしてくれたんだ、と。
その声を私はずっと感じ取っていた。

でもなぜ自分の心が軋んでいるのか、気づく事は出来なかった。私が無意識に求めるものがなんなのか、悟る事は出来なかった。
魔法はあまりにも完璧だったんだ。

だから、ただ心があげる悲鳴を聞き続けるしかなかった。これは、地獄だ。

美鈴と咲夜に気づかわれ。
パチュリーに驚かれ。
霊夢に心配された。
いつもの私とはかけ離れた姿だったろう。
そんな風にしてしまう魔法をアリスに、軽い気持ちとはいえ少しでもかけようと考えた自分の馬鹿さ加減に、なんとも言いようのない怒りを感じる。

パチュリーが魔法を散々こき下ろしたのも、今なら分かる。

あの時パチュリーに言われた、本の事。あれはきっと、私への忠告。
アリス・マーガトロイドというページを破られた、霧雨魔理沙という本は、その存在が揺らいでしまうほどの大ダメージを受けた。
その上私は自分の都合でアリス・マーガトロイドという本から、霧雨魔理沙というページを破ろうとも考えていた。

――――本を破るなんて真似よしてちょうだい

あぁ、全くだ、言われるまでもない。そんな真似、金輪際するもんか。


ごめんアリス、こんな自分勝手で、馬鹿な私で本当にごめんなさい。


口に上る事のない謝罪を込めて、アリスを抱きしめている両腕に力を入れる。

「苦しいってば」

くすくすと笑いながら、抗議するように私の背中をとんとんと叩く。
最後にぎゅっともう一度だけ強く抱きしめて、そっと体を離すとアリスは苦笑いのような、困ったような顔をしていた。

「本当にどうしたのよ? そんなにぼろぼろで。しかもいきなり抱きつくし」
「いや、なんとなく抱きしめたくなってな。猛る力を両足にこめて、急いでアリスのところにはせ参じたんだよ」

ぐっと言葉に詰まり照れるアリス。にやっとした笑みを浮かべる私。
いつものやり取りが、いつも以上に幸せで、嬉しい。
私もようやっと本調子に戻り始めたようだ。

「な、なら飛んでくればいいじゃない。わざわざ走ってくる事無いでしょ、箒もあるのに」
「いやー、アリスに会いたい気持ちが爆発しそうでな。体を動かしてないと本当に爆発するかもしれなかったんだぜ」
「……っ! いい加減な事言って、もう……。とりあえず上がったら? 夕飯前だけど、のど乾いてるなら紅茶入れるわよ」
「おう、悪いな」

そう返事をすると、アリスはそのまま台所へ行き紅茶の準備を始める。
アリスはクールに振舞おうとしているが、頬を染めているのがまる分かりだ。

その姿を見ながら私は思う。

アリス、ごめんな。
私はいつか死ぬ。
人間だから別れは必ずやってくる、避けられはしないのだ。
その時、アリスは泣くかもしれない。傷つくかもしれない。絶望するかもしれない。
私が一緒にそばに居て支える事も出来ない。
でも、その事実から目をそむけないで乗り越えてほしい。
目をそむければ今日の私みたいな、酷い結果になってしまうかもしれないから。

それに、アリスが笑っていられるように、私もできる事を精一杯やる。
記憶を封じるという案と一緒に考えたもう一つの案。

アリスをとんでもなく幸せな記憶で一杯にして、私が居なくなった後でも幸せパワーで笑っていられるようにする。

パワーが信条の私だ。
記憶を封じるなんて小手先よりもこっちの方があってるし、きっと正しい。
アリスを幸せの砂糖漬けにして、涙なんか乾かしてやるんだ。

この案はきっと時間がかかるだろう。死ぬまでかかるだろう。
でもそれでも私はやり遂げる。あきらめの悪さは折り紙つきだし。

それになにより私は。


「どうしたの、いつまでも玄関で立ってて。紅茶、もうすぐできるわよ」
「おう、ありがとな。今行く。あ、そうだアリス」
「何?」

机にティーカップをそろえながら、私の方を振り向く私の恋人。


「愛してるぜ、アリス」


何より私はアリスの事が大好きだから。

「~~~……っ、ちょ、直球すぎよ、ばか」

アリスが顔を真っ赤にして急いで背中を向け、私への文句を口にする。
でもその口元が嬉しそうに笑っていたのを見逃す私じゃない。
そう、こうやって少しずつ幸せをアリスに降り注いでやろう。
いつか来るだろう未来でも、アリスが笑っていられるように。

私は床に落ちた箒と袋を拾い上げた。
箒はそのまま壁に立てかけて、マドレーヌが入った袋を抱えてアリスの方へ向かう。
紅茶のいい香りが私を包む。
今日はほとんど何も食べてないからお腹も減ったし、夕飯前だけどマドレーヌもつまもうかな。アリスと一緒に。

そのあとで、アリスをどうやったら幸せまみれに出来るか考えるとするか。





とりあえず今は咲夜がくれたハート型のマドレーヌと一緒に、紅茶を飲もう。





今度の紅茶はきっと、飛びきり上等の味がするだろうから。
















以下後書き

     
『恋、それは必ず別れが来るからこそ燃え上がるものよ』    ウ・サン・クサイナユ・カリン氏の発言

というのは冗談でちょっと寿命差をテーマに何か書いてみたかったのです。
ただどっちかが死んじゃうような寿命差だと書いてる時に鬱になりそうなので、こんな感じになりました。
人生初の一万字を軽く超える長文……自分頑張った。
とりあえずマリアリはキャッキャウフフしてればいい。そして周りの人間を砂糖まみれにしてしまえばいい。
タグにマリアリって入れちゃうとネタばれになるから泣く泣く削ったのはいい思い出。

拙い作品ですがここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
マリアリが俺のじゃすてぃいいいいいす!



追記


そういえば『遠回りな答えの出し方』の感想で、【力づくで正解にするのが、魔理沙の答え】という風に言って下さった方がいました。
この感想を読んだ時に、私は目からうろこの気分でした。

正解を導きだすのではなく、正解をもぎとるのが私が書きたかった魔理沙なんだなぁ、と。

時に読者様の方が、作者の言いたい事をより正確に把握できるんですね。


相当前の話ですし、ここは辺境地なのでこの感想を下さった方が読むことはほぼないと思いますが、この場で心よりの感謝を表したいです。
もちろん他の感想を下さった方たちにも深い深い謝意を表します。


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【2010/04/29 19:53】 | SS
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