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東方関係の二次創作の絵置き場です。大抵の絵から百合臭がしますので、苦手な方は速効逃げてください。ほのぼの・ギャグ系多めです。ピクシブの方がメインだったりもします。
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魔理沙 アリス マリアリ 百合 短編

透き通った琥珀色の液体が、ポットの先からカップの中へ飛び込んで行く。
 注ぎ込まれる音はわずかながらに耳に触れ、柑橘系の香りが空気の中で駆けまわる。
 不思議だ。ここにいると全ての音が、香りが、生き物が舞台を作り上げているように見える。観客は私一人の魔法の舞台。トンタッタ、トトンタッタン。想像の中で踊っているのは目の前でクッキーの入った皿を用意している人形達。緩やかな音楽に合わせそれは綺麗に踊っている。

 そしてそんな舞台を作りだす指揮者は、紅茶の用意をしている七色の魔法使い。
 しなやかな指先と軽い足取りでお茶会の用意をしていく。淀むことなく、迷うことなく、定められたかのように無駄な動きをしない様子は本当に魔法のようで。

――――アリスって、綺麗だな

 そう思ったのはある意味、当然の事だ。
 だから知らず知らずのうちに本心が口から滑り出していたって、しかたのない事だ。


 その結果、真赤になったアリスが手にお茶を引っ掛けて、少しばかり火傷をしたって私のせいじゃない気がするんだけど。









「全く……何もあんな事を急に言わないでよ」

 まだ若干痛むのか、軽く火傷した指をさすりながら眉を寄せてアリスが私の方を見る。いや、睨む、の方が正しいか。

「あんなって、別に悪い事は言ってないぞ。むしろ褒めたんだぜ?」

 本当に私は悪くないと思うのだが、なんとなく口調が言い訳めいてしまう。だってアリスの綺麗な指先が赤っぽくなっていて痛そうだし、それに付随して非難めいた視線を寄こされれば強固な態度には出られない。
 好きな奴に睨まれるのは誰だっていい気分はしないものだ。

「褒めてくれたのは、別に……責めてるわけじゃ、ないの」
「そうなのか。じゃあ私は何を怒られているんだ?」
 
 どもるようにして、アリスが言葉を紡ぐ。頬が薄く染まっているのは、私の褒め言葉を思い出したせいだろうか。よかった、綺麗って言われるのが嫌なわけじゃないようだ。まぁ、褒められるのが嫌だなんて奴はあんまりいないか。恥ずかしがる奴はいても。
 しばらく言葉を探していたが、思いついたようにアリスが言う。

「うん、タイミングの問題よ」
「タイミング?」
「そう、タイミング」

 また何を言い出したんだろう、アリスは。
 魔法使いは時々超独自理論を展開する。独自理論こそが魔法を生み出す根幹であるとはいえ、魔法の構築についてだけではなく一般生活にまでその理論を持ち込むのはもはや職業病なのだろう。

「いい、魔理沙。物事には何に対しても良い頃合いって言うものがあるのよ。紅茶の抽出時間のように短すぎてもいけない、長すぎてもいけない、その中間の一番良いタイミングってものがあるの」
「へぇ、そんなものがあっただなんて気付かなかったな。ってことは物を借りるのにも、ベストなタイミングってやつがあるって事か?」
「魔理沙の『借りる』は盗むって事だから、ベストもタイミングもあったもんじゃないでしょ。犯罪よ、犯罪」
「失礼な、ちゃんと返す予定はあるんだぜ。死んだらな」
「だから、そういうのを世間一般では窃盗って言うのよ。大体魔理沙ってばまた紅魔館から本盗んだでしょ。パチュリーに本を借りに行くたび、ちくちく嫌味を言われるんだけどね。『世話係としてきちんと躾けておいて』とか……私は魔理沙の世話係じゃないわよ!」

 おっとぉ。なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。アリスの目つきが段々細くなってきたし、口調も険呑になって来ている。『借りる』話題は藪蛇だったか。

「で、アリス、良いタイミングってのは結局何なんだ」
「え? あぁ、そう、その話をしていたのよね」

 こういう時は話題をそらすのに限る。アリスもあっさり元の話に戻ってきた。

「だから物事にはいいタイミングって物があるの。誰かを訪ねる時、お菓子を焼く時、魔法を練り上げる時、他にも色々あるけれど、一番良い時っていうのがあるでしょう? 逆にそのタイミングを逃してしまうと、上手くいかなくなって物事が空回りし始める。かの有名なロミオとジュリエットだってお互いのタイミングさえ間違っていなければ、あんな悲劇にはならなかったのだから。その点そういうすれ違いを利用しての悲劇だからこそ、観客の涙を誘うって言うのもあるんだけど、私にしてみれば少しわざとらしい気もするのよね。身分違いとかすごいコテコテだし。あ、でも当時の人にしてみれば共感すべき事例だったのかしらね、身分に縛られる事が当たり前だった訳だから」

 おぉ、おぉ、段々話題がそれていくぞ。ずらずらと言いたい事を並べていくうちに、変な方向へかじ取りをし始めてしまったようだ。
 このまま別の話題に移っていってもいいのだが、アリスが何を言いたがっているのか判断がつきかねてしまうのは困る。素直に思った事をアリスに言って怒られてしまうのは、なんというか、ひたすらに困ってしまう。

「で、要はなんなんだ?」

 私の一言でアリスは、はっとした顔をする。どうやら最初にいいたかった事をきれいさっぱり忘れていたらしい。
 話すのに夢中になりすぎて、言いたかった事を忘れるとか子供みたいで可愛いな。
 もちろん今思った事は口には出さなかった。これをそのまま言えばさすがにアリスに本気で怒られそうだからな。ただこらえきれなかったにやにや笑いには、しっかりと恨めしげな視線が帰ってきたけれど。
 しばらく私の事をじとっと見た後で、すこしばかりばつが悪くなったのか、やや視線を下げ気味にして結論を言ってきた。

「だから、要はああいう風に、その、褒めるのならタイミングを大事にしてって事よ。じゃないと危ないじゃない」

 ふぅん、と分かったような分からないような相槌を返す。それでもアリスは満足げに少し冷めてしまった紅茶を口に含む。
 結局、アリスが言いたかった事は紅茶の用意をしている時に褒めるなって事のようだ。表情が動かないクールな人形遣いという印象を他の奴らには持たれているかもしれないが、案外アリスは恥ずかしがり屋だから。

 こういうところを、めんどくさいと思わずに可愛いと思ってしまうのは、つまり私がアリスにベタ惚れである証という訳で。

 誰が聞いている訳でもないのに、そう思いついた時に何となく耳の辺りが熱くなった。アリスが恥ずかしがり屋だなんて、私が言えた義理じゃないかも。
 一つ溜息をついて、飲み終わった紅茶のカップを片手で持ち上げて立ち上がる。自分で使った食器は自分で片付ける。アリスに何度もごちそうになっている私なりのせめてもの、誠意の表し方だ。さすがに1から10まで毎回世話になるのは、いくら私でも心苦しいのだ。

 机を回り台所に行こうとして、ふとアリスに聞いてみたくなった。

「じゃあさ、私たちにもタイミングってあるのかな?」

 何を問われたのか今一つ分からなかったのだろう、微妙に眉を寄せたアリスが私の方を振り返る。
 そんなアリスのそばにそっと近寄り、カップを机の上に戻す。

「タイミングって何のよ?」

 案の定分かっていなかったか。不思議そうなニュアンスを含めた声が私の耳を通り抜ける。

「タイミングは、タイミングだよ」

 頬を緩ませるようにして笑いながら、アリスの両頬へ手を伸ばす。
 陶器のように滑らかな肌の感触を、私は指の先で感じ取る。暖かいような、冷たいような、掴みどころのない感覚。私を満たしてくれる、優しい感覚。

 座っているアリスの顔に、かがむようにして顔を近づけていく。

 見つめ合っている空色の瞳がゆっくりと、隠れていく。


「私たちの、な」


 寸前で小さく呟いた言葉は、ゼロになった距離の間で静かに消えていった。

















 物事のタイミングは重要らしい。なんせ、ブレイン派が言う事だ、きっと一理ある。

 だから森にすむ二人の魔法使いが甘い恋人同士になるタイミングにも、丁度いいものがあるのだろう。



 例えば何でもない午後のひと時とかな。










以下後書き

久々に原点回帰。やはりこの二人は、いちゃいちゃしているのがよく似合うと思うのです。
もっとマリアリの波が来ればいいと思います。
ここまで読んで下さりありがとうございました!


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【2010/08/23 00:22】 | SS
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霊夢 魔理沙 オリキャラ 早苗 アリス


「おはようございます」




つややかな黒髪を肩口で結わえ。
赤い瞳の切れ長の目を私に向けながら。
綺麗に正座をして、枕元から私の事を見降ろしてくる巫女服の女性。




朝、目を覚ましたら、そこに居たのは見知らぬ人でした。




2回ほど目を瞬く。
処理能力が間に合わない。
寝起きに誰だかわからん奴が枕元に居るって何さ、夢? 夢なの? 夢よね? そーよね、そーよね。やだ私ったら。
じゃあ目を覚まさなきゃ。夢で寝れば現実で目が覚めるのが道理。
そんなわけでグッバイ知らん人、おやすみなさい。あなたの事は忘れないわ、目が覚めるまで。

「布団かぶって二度寝の態勢に入るの止めて下さい。起きて下さい、霊夢。もういい時間ですよ」

頭までかぶりなおした布団の上から私の体がゆさゆさと揺さぶられる。
しつこい夢ね。いい加減目を覚ましなさい私。いくら昨日が宴会だったからって、そんなに寝てる事ないでしょうが。早く起きて寝てる3人起こさなきゃいけないんだから。起きなさい起きろってば。お願いだから起きて下さい。

「……仕方ないですね、えいっ!」
「むぇっ!?」

ぶわっさ!という音と供に被っていた布団をはぎ取られる。冷えた空気が私の体を包みあげ、一気に脳内が覚醒する。

「ななな何すんのよ! 寒いじゃない!」
「すみません、こうでもしないと起きて下さらない気がいたしまして」
「だからっていきなり布団剥ぐ事ないじゃない!」
「何度声をかけても起きない方が悪いのです。それに起きたらまず挨拶です、基本ですよ」
「え、あ、あぁ、おはよう?」
「はい、おはようございます、霊夢」

わずかながら頬の筋肉が動き女性の冷静な表情が緩む。
あ、この人結構綺麗ね。もっと微笑めばいいのにもったいない。ん? あれ?

「って! 違うから!!」
「どうしました、霊夢?」

あまり変わらない表情だが、それでも分かる程度に疑問の表情を浮かべる女性。
まてまて、疑問なのは私の方だから。

確認する。

目の前に居るのは女性だ。今まで一度もあった事が無い女性だ。全然、完璧に、完全に、欠片も知らない。そんな人がなぜ自分の枕元に居て、布団はがされて、起こされて、朝の挨拶まで強要されなきゃならないのか。しかもこやつここに居るのがごく当たり前って顔してやがる。いくら博麗神社が入り浸りOKな神社でも、私に挨拶もなく寝室に上がりこむってどうなのよ。新種の変態かしら。なんにせよ制裁フラグはばっちOK。カモンベイベレッツキリングタイム。

「ふぁあ~、おはようございます、霊夢さん」

ぐっと握りしめたこぶしに平和な声が響く。
うるさくしたせいか昨日一緒に宴会してそのまま泊まって行った早苗が、隣の布団で目をこすりながら起き上る。
そして私へと目線を投げて、そのまま隣いる謎の人物を見つめてぽかんとする。

「えっと……どなたでしょう?」

あ、そうか、そうよね、まず身元確認よね。寝起きは思考が飛んじゃうわね、まずいわ。知り合いの知り合いくらいの人が知り合いに連れられて来たのかもしれないし。いきなりぶっ飛ばすとか第一印象最悪にも程があるもの。
女性は早苗を見て自分の身元を明かす。

鈴を転がすような耳触りのいい声が響いて、


「私は霊夢の道具です」


爆弾を投下しやがりました。


博麗神社に二人分の絶叫が響く。


「れれれれれ霊夢さん!? ままままさか、この人の事を……!?」
「ま、待って、誤解しないで! 私こいつの事なんて知らないわよ! あんたも突然何言ってんのよ!」
「知らないとは失礼な言い草ですね。私を投げたり叩きつけたり、あげくほっぽらかしたりを散々しているというのに」
「はぁ―――っ!?!?」
「げ、幻想郷では、常識にとらわれてはいけない、のですね。しかしまさか特殊な方法の上、放置だなんて……さすが博麗の巫女、半端ないです」
「いやぁー!? 私のイメージが壊れていく――っ!!」

自分の頭を抱えて絶叫する。何この状況、意味分かんない、ホント分かんない!
早苗は早苗で微妙に頬を染めながらこっちをちらちら見ているし、件の女性は平静を保ったまま私の混乱っぷりを見ている。

あー! もうなによこの状況!!


「ん~、なんだよ、うるさいなぁ……」
「ほんとよ、ふぁ~あ」

私の絶叫に叩き起こされて、今まで熟睡していた魔理沙とアリスが起き上がる。
助かった! 魔理沙はともかくアリスなら冷静に状況判断をしてくれるは……ず……?

「……ねぇ、魔理沙、その子は一体……」
「はっ? 何言ってるんだ、霊夢、その子ってっ……!?」

目がまん丸に見開かれた私たち一同の視線はある一点に向けられる。
起き上った魔理沙のお腹の上に、金色の髪を肩のあたりで切りそろえた小さめの女の子が抱きついていた。見た事が無い子だ。
その子が目をこすって一つ大きなあくびをする。そして魔理沙の方を見上げてにっこりと笑顔を浮かべる。


「おはよう、ご主人様!」


今日二度目の爆弾が投下されました。

再び博麗神社に絶叫が響いた。4人分の。


「ちょっと魔理沙! もしかしてあんたそういう趣味あったの!?」
「なななななないわっ! お、お前誰だよ、私はお前と会った事はないぞ!?」
「酷いよ~、ご主人様! 私を抱き締めながら、『お前は最高の相棒だ』ってあの夜言ってくれたじゃない!!」
「んなっ!?」
「うわ~、そんな事を……魔理沙さんロマンティックですね!」
「違うわーっ!」

魔理沙に面識を否定されたせいか、少女のうるみ始めた目と不満そうにとんがらせた唇とがダブルラリアットで魔理沙への不信感を直撃する。
こんな清純そうな、しかも幼女に近い少女に手を出すなんて、あんたアリスという恋人がいながら……って、あれ? アリスからの反応なくない?
首を回してアリスの方を見た。


鬼がいた。


「…………魔理沙?」
「ひっ!? あ、あ、あ、アリス? あの……これは誤解で! ほ、ほらお前もなんか言えよ!」

ハイライトの消えた絶対零度の瞳で見られる恐怖に、魔理沙はついお腹に居る少女に話を振ってしまう。
でもそれって悪い方向にしか話が転がらない気がするんだけど。

「ご主人様の相棒です! よろしく、アリス!」

その一言でアリスの中の審判が決まったらしい。アリスの顔がものすごい事になって、魔理沙が涙目で何か言い訳しているけど、私は何も見ていない、うん。

「いや~、大変な修羅場ですね、見ごたえがあります」
「本当です。しかしこのまま止めないと血の雨が降りそうな気配がします」

早苗と謎の女性が会話をしながらのほほんと修羅場を見つめている。
修羅でのほほんか……相反してるわ。ん? ていうかあんたら何時の間にそんな仲良しに!

「信じてくれアリス! 私はこんな奴知らないってば! ほんとにほんとだぜ!」
「そんな事言うなんてご主人様は意地悪だ! 私はずーっとご主人様を支えてきたのに!」
「へぇ……この子にずっと支えられてきた……ねぇ」
「うわーっ! アリスの顔が般若に――っ!?」
「大変ですねぇ」
「大変ですよねぇ」

混乱はとどまるところを知らない。

「浮気は絶対しないとかいっときながらこれはどういう事かしら?」
「ちょ、その般若顔怖すぎるから! いつもの可愛いアリスに戻ってー!」
「わー、アリスの顔すごいね、ご主人様! どうやったらああいう顔になるの? 暗黒オーラでてるよ」
「修羅場ですねぇ」
「修羅場ですよねぇ」

あぁもう。あんたら!


「うるさ―――い!!!」


私は叫びながら床にドバンと手を叩きつけて、場に静寂を呼び寄せる。
一時誰もが口を閉じる。
そのすきに私は会話の口火を切った。重要な事を確認するために。

「皆色々言いたい事があるのは分かったわ、えぇ。私も聞きたい事はたくさんあるわ。でもとりあえずこれだけははっきりさせましょうよ、まず一番目に」

キッと目に力を入れて見た事のない二人に目線を向ける。

「一体あんた達二人はなんなの!!」

申し合わせたように女性と少女とが目を合わす。

「ですから霊夢の道具だと言っているじゃありませんか」
「私もご主人様の相棒だよ」

若干誇らしげな雰囲気すら漂わせて答えを言う二人。
あぁもう、らちが明かない。だがこの二人に嘘をついてる気配はない。博麗の巫女としての勘だけど、ほぼ外れた事はないから……って、あれ? この二人、ひょっとして人間じゃない?
よくよく気をつけてみると妖力に近いものを二人の体から感じる。

「あんた達ひょっとして妖怪なの?」
「そうですね、ある物質を核に変化したという意味では確かに妖怪です」

うんうんと少女の方も頷く。


「そのある物質って何よ」



























「霊夢の陰陽玉です」
「ご主人様の八卦炉だよ」


「「「「んな馬鹿な――――!?」」」」


皆の脳内が爆発した。




以下後書き

某永遠の17歳曰く『道具と九十九神の境界をいじる事もできちゃう私最強に可愛い』



「つまり九十九神は擬人化への近道だったんだよ!!」
「な、なんだって――っ!?」

という話。それだけです。オチは投げっぱなしジャーマン。
他にも咲夜さんのナイフとか神奈子様のオンバシラとか映姫様の悔悟棒とか擬人化したら面白そうなのがたくさんありますね。
そのうち陰陽玉×霊夢とか八卦炉×魔理沙とか最終的に陰陽玉×八卦炉とかmすいません調子こきました。無理です。

憧れの爆発オチと擬人化を両方いっぺんにやれてお得でした。
しょうもない話ですが読んで下さりありがとうございました!


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【2010/08/23 00:20】 | SS
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幻想郷 リア充 

幻想郷少女臭歴×××年 幻想郷はリア充の炎に包まれた。








お天道様がきんきら輝いている真昼間。
赤い館のカーテンを閉め切っているとある部屋から声が聞こえてくる。

「咲夜ぁ! やばいわ、眠気に負けそうよ! もう一本オロナミンBloodを持ってきて! このままじゃ三日しか起きてられなくて寝ちゃうわ!」
「申し訳ありません、お嬢様。先程飲まれたオロナミンBloodが最後の一本でした。今、美鈴が超ダッシュで人里に買いに行ってます、300本ほど」

目にはっきりとした隈を作った吸血鬼の少女と、瀟洒なたたずまいをしているメイドが供に机に向かっている。

「そ、そんな……アレが無いと私は正気を保ってられないのに……っ! そうだっ、パチェに眠気が吹き飛ぶ魔法でもかけてもらえば」
「残念ながらパチュリー様は『体力の限界へ挑戦をしてくるわ』と言って、一時間前に小走りでお出かけになりました。多分今頃、小悪魔が湖の沿岸のどこかで介抱中だと思います。ちなみに妹様は新しいスペルカードの計算式を数百枚に渡って書き連ねている最中ですので、お手伝いには来られないとおっしゃってました」

メイドの言葉に愕然とする吸血鬼の少女。
あたかも直属の部下から『課長ってぶっちゃけ居ても居なくても一緒ですよね』と言われた上司のような絶望感を漂わせている。真っ黒オーラだ。

「フランまで手一杯だなんて……いいえ、でも紅魔館旅館化計画の頓挫なんて許されないわ。いいわ、紅魔館の主としての力量、今こそみせてやるっ!!」
「さすがです、お嬢様。私でよければ微力ながらお手伝いを」

そろばんをはじく音と、ペンを動かす音とが奏でるハーモニー。
そこはある意味、戦場だった。











魔法の森のどこかに存在する、じめじめと湿った洞窟。
うす暗く、足元が見えにくいその中でたくさんの白い服をまとった人形たちが動いていた。
そして人形たちに指示を出している帽子・メガネ・マスク・白い服という完全防備の怪しい人影が二つ。

「みてくれ。こいつをどう思う? アリス」
「すごく……大きい、わ、魔理沙」

片方の人影がもう片方の人影の目の前に棒状の物体をつきだす。
つきだされた方は溜息をつくように感想を漏らす。

「だろ? この太さと形! こんな自慢の一品はなかなかないぞ」

にやにやしながらその棒状の物体を愛おしげに撫で摩る人影。

「えぇ、ほんと大きい、このエリンギ。そろそろ出荷できるわね。あっちのシメジとマイタケもあと数日すれば出荷可能よ」
「おぉ、そうか! いや~、しかし試しにやったきのこの製造販売がここまでうまくいくなんてな。人里の店にきのこの種類が無い事に目を付けたのは大正解だったぜ。まぁ、ここまで規模が拡大できたのはアリスの人形たちのおかげだけどな」

そう言うと片方の人物は、先程からキノコの世話を一生懸命している人形たちに目を向ける。
せっせせっせと働いてくれる人形は、文句も言わない、食べ物も休憩も要らない素晴らしい労働者たちである。

「案外きのこって大きくなるまで世話が焼けるものね。魔法を駆使しての24時間空調管理はちょっと大変だけど」
「なぁに、その分の見返りは帰ってくるさ。皆いつでもきのこが食べられるって喜んでくれるし、儲かるし。さて次はマツタケの栽培に取り組もうと思ってるんだが、どう思う?」
「マツタケか……難しいかもしれないけど、うまくいけば手ごろな価格でいつでも手に入るしいいと思うわ」

真剣にマツタケ栽培について話し合うまっしろしろすけ二人組。
そこはある意味、研究所だった。












風が優しく桜の花を散らせていく昼下がり。
白玉楼にはひたすら何かを食べる音と、ペンで文字を書き連ねる音が響いていた。

「幽々子様、少しお休みになられては……」
「だめ、だめよ、妖夢! それはできないわ」

桃色の髪をした人物が、帯刀した少女に向かってはっきりと拒絶の意思を見せる。
それでも食い下がるように少女は言葉を重ねる。

「しかし、これでは幽々子様の体に負担が」
「大丈夫よ、妖夢。心配はありがたいけど、私はもう死んでるから体を壊したりしないわ。それにこの『幽々子の世界各地はらぺこ列伝』の連載を楽しみにしてる読者のためにも頑張らなきゃ」

にこりとこの上ない綺麗な笑顔で少女へと返事をする。
その様子を見た少女は溜息をついた後、苦笑いを浮かべながら言葉を返す。

「文さんの新聞の購読数が跳ね上がるほどの人気ぶりですからね。わかりました、もう止めません。でもお手伝いはさせて下さい。幽々子様が書いた物をまとめたりしますから」
「ありがとう、助かるわ。じゃあ続きをしなきゃね。どれどれ」

桃色髪の人物が手近にある干し肉がつまった袋に向かって手を伸ばし、無造作に口の中に放り込む。
むしゃむしゃもぐもぐぱくぱくもっぎゅもっぎゅぷちぷち。
あっと言う間にその袋の中身を完食する。

「――もぐもぐ、ごくん。これはそうね、ワニの硬めの肉が歯ごたえを引き出しているけど味はいまいち……。さっき食べたカンガルーの肉の干したやつの方がおいしかったわね。ところで妖夢、ワニとかカンガルーってどんな動物なのかしら」
「さぁ? 兎とか牛とかの親戚でしょうか」

部屋の隅に積み上げられた色んな食べ物が、桃色髪の人物の口へ入る出番を待っている。
そこはある意味、食堂だった。












開けている窓からはきゃーきゃー、わーわーと子供たちの遊びまわる声も絶え間なく聞こえてくる。
その声を聞きながらペンを動かしていた人物の水色の髪を、窓から入ってきた風そっと揺らしていく。
と、いきなり部屋の扉ががらりと開いた。

「いや~、まいった、皆宿題してこないんだもの。あ、慧音居たんだ。おっと慧音校長だったか」
「授業ご苦労さま、妹紅。それと生徒の前じゃない時は呼び捨てにしていいといっただろう? 前から呼び捨てなんだから校長、なんて言われると照れくさいんだが」
「そんな事言ったって、寺子屋から学校にまで規模を拡大したうえでの責任者なんだから、校長でしょ?」

からかうように言う白髪の少女と、照れくさそうに笑う水色の髪の人物。

「ところで慧音校長は何していたのさ。それ、子供たちに配る様のやつじゃないでしょ」
「あぁ、これか? これは教員募集の張り紙さ。学校が大きくなって、永遠亭の皆も手伝ってくれてはいるがまだまだ教員が足りなくてな。どうにも頭を悩ませているところだ」

額に手をあてながら考え込み、その眉根にははっきりとしわが出来てしまっている。

「あぁ、輝夜が国語の先生したり、永琳が保健の先生したり、か。あのうそつき兎が道徳の先生っていうのが問題ありな気がするけど、いいの?」
「いいんだ、てゐ先生は長生きだからな。色々知ってるし、意外と授業の評判もいいし。それよりも妹紅、この教員集めの張り紙はどうかな」
「ん? どれどれ」

白髪の少女が水色の髪の人物の手元にある紙を覗きこむ。
そこには様々な教員を集めるための文章がのっていた。

「………………ねぇ、慧音。“成長しない先生たちと一緒に成長する子供たちを見守る職場です”とか“ウサ耳の先生があなたの同僚に!”ってどうなのよ。しかもこれ注意書きに“先生たちが時々殺し合いを始めます。注意して観戦することがお勧めです”って書いてあるんだけど」
「ん? だってどれも事実だろ? 問題ないじゃないか」
「いや、そう、なんだけど、さ。なんかさ、こう、納得できないと言うか」

あーだこーだといい合いを始める二人。
それはある意味、作家と編集のやり取りだった。











暖かな日差しが降り注ぐ博麗神社。
境内にはたくさんの参拝客が来訪していて、賑やかな話声がそこかしこから聞こえてくる。
その様を神社の陰から見つめている赤と緑の巫女がいた。

「す、すごい……こんなにたくさんのお賽せ、じゃなかった参拝客が来るなんて……!」
「ふっふっふっ、すごいでしょう、霊夢さん。これが外の世界で経営手腕を鳴らしてきた私の実力ってやつです」
「これは奇跡よ! 早苗あんた本当にすごいわ!! 神社のあちこちになんかよく分からない絵を置くだけでここまで人を呼び込めるんだから!」

そう言って赤い巫女が目線を映した先には、現実から5割増しで可愛く描かれた幻想郷の有名人物達の絵がずらっと飾られていた。

「あれは“萌え”属性を最大限にいかした絵です。幻想郷で有名な方々を可愛くデフォルメした絵で、たくさんの人達に神社に興味を持ってもらい、来て貰うようにする。後は神社で上手い対応をしていけば口コミで自然と人がやってくる。これこそ現代流の人呼び込み術です!! 神社経営立て直しを考え続けた10年間は伊達じゃありません。学校の文化祭で集客率大幅アップの功績を讃えて“コンサルティンガー早苗”と言われたくらいなんですから!!」

長いセリフを一気に言いきって、えへんと胸を張る緑の巫女。
ものすごいどや顔を浮かべている様はまるで、平均点60点のテストで120点をたたき出した小学生のようだ。

「おぉ~! 最後の方とか何言ってるか全然分かんないけど、さすがね早苗!! でもあんた守矢神社の方はいいの?」

赤い巫女がごく当たり前の疑問を問いかける。

「あー、うちの神社は参拝客多いですから大丈夫です! それに萌え絵の中に神奈子様と諏訪子様も混ぜてるから実は宣伝効果がごにょごにょ……と、とにかく、いいんです! 今は博麗神社にもっと人を呼び込みましょう! 次策も自信ありますよ!」
「そうね、ありがとう、早苗!! 」

がっしりと固い握手を交わす赤と緑の巫女。
それはある意味、友情の証だった。








燃え上がり続けるリア充の炎。
それを消す事など、誰にもできないのだった……。
























「という幻想郷なら、今の私が働いても問題ないと思わない? 小町」
「変な言い訳して働こうとしないで、熱が出たときくらい素直に休んで下さい、四季様」

     


以下後書き

数か月先まで遊ぶ時間があんまりない! なんていうことだ絶望した! という思いをSSの形にしたらこんなになりました。創作時間欲しいよう!

後、四季様はリア充というかワーカーホリックですよね。あれ? 台無し?



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【2010/08/23 00:18】 | SS
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魔理沙 百合



続きは収納
やっぱりだ。なんかおかしい。
何かはわからないがおかしいものはおかしい。


紅茶を飲んでいたティーカップを、受け皿へカチンと乱暴に戻す。

なんだって言うんだ。なんだってこんなに――――



「……なんだってこんなにまずいんだ」


私のほかに誰もいない空間に向かって、こぼすように独り言をつぶやく。
まずい。
紅茶がまずい。

いや、正確に言うとまずいわけじゃない。
何か足りないのだ。何か物足りない、今一つの味なのだ。
例えばそれは、お茶を欠いた貧乏巫女、胡散臭さのないスキマ妖怪、白黒じゃない私、すなわち霧雨魔理沙のような物足りなさなのだ。

首をひねって原因を探るが、いつも通りにいれた記憶しかない。
茶葉もこのまえ新しくしたし、紅茶の抽出時間も完ぺきだ。

だとすると原因は……。

「やっぱこれしかないか」

机の上に置いてある紙をつまみあげて、そこに書いてある字をもう一度読み返す。

『私へ
 記憶が飛ぶかもしれないから一応書いておく。
 今魔法の実験を私の体へ行っている。
 とりあえず半日程度で効果が切れるようになってるから、そのまま過ごせ。
                             霧雨 魔理沙』

この前衛的なくせ字は明らかに私が書いたものだ。サインもあるし。
どうやら私は自分自身の体へ、何かの魔法をかけたらしい。
『何か』というあやふやな状態なのは、手紙で数時間前の私が危惧していた通り、魔法を行使したおかげで多少記憶が吹っ飛んでいるせいだ。
先程目が覚めると、私は部屋の床に倒れ伏していて、その床には見覚えのない魔法陣が書き込まれていて、なんでこんな事態になっているのかさっぱりわからなかった。
とりあえず立ちあがって部屋の中を見回してみると、机の上に自分で書いたあの手紙を発見したのだ。
なるほど、そうかいつもの実験か。
その場で納得した私は、埃っぽい床で倒れ伏していたためののどのイガイガを直すべく紅茶を入れてただ今ティータイムの真っ最中というわけだ。

しかし、しかしだ。
意識を取り戻した最初はぼ~としていたため気が回らなかったが、落ち着いてみるとなんだか落ち着かないのだ。
文脈がおかしいわけではない。
なんかおかしい。なんかざわざわする。
ここが決定的におかしいのだと断言はできないのだが、魔法使いの勘というか人間としての感覚というか、そういうものがおかしいと微かに訴えている気がするのだ。

これはあれだろうか。
ひょっとして魔法の行使中どっかで失敗したんだろうか。
自分の体で実験したのだから絶対安全だとは思うが、万が一、いや億が一、失敗していたらまずい事になりはしないか。
あの手紙があったから確かに混乱しないで済んだが、どんな魔法を行使したのか書いておいてほしかった。
実験を行う前の私の迂闊さを罵りたくなってくる。
やい、霧雨魔理沙! おまえは普段手を抜きすぎる! そして付け加えさせて貰えば、身の回りを片づけなさすぎる! そのせいであの魔法陣の資料がどの山なのかさっぱり分からないじゃないか! 記憶が飛んでもどんな魔法を使ったのか調べる事も出来ないなんてな! はーっはっはっはっ、いい気味だ!

……止めよう、むなしくなってきた。

そう、とりあえずざっと考えて八方ふさがりだ。
あっちもこっちも塞がってるが、この違和感は自分じゃどうする事も出来ない。
となると。

「専門家に聞きに行くか。こういうの得意そうだし」

脳裏に年中動くことのない、服が紫色で、たまに動きすぎると顔面も紫色になる人物を思い浮かべる。

思い立ったら即行動。
残っていた紅茶を一息で飲みほし、私は帽子をかぶるために立ち上がった。


















箒でひとっ飛びに湖を超えてみれば、目的地である紅魔館が見えてくる。
前から思っているけど、いくら名前がスカーレットだからって館まで赤い色で統一するとか趣味が悪いとしか思えないな。
それとも吸血鬼の美的感覚って人間と違うのかもしれない。
赤色を見てると癒されちゃう! だって吸血鬼だもん★、ってことなんだろうか。
うん、なんか友人関係を結んでいていいのか疑いたくなる趣味だ。
やっぱり赤よりも白黒、時代は白黒だ、白黒。目に優しいし、パンダも可愛いし、白黒は最高じゃないか。

取り留めのない事を考えつつ、私は紅魔館の門から少し離れた所にゆっくりと下降して降り立った。
いつも通り門番を吹っ飛ばして入ってもよかったのだが、今日は本を借りに来たわけじゃないから『客人』として紅魔館を訪れる事にする。
弾幕ごっこの気分でもないし、なんとなく気分が良くないのも相変わらずだから。

歩きながら門へと向かっていくと、ゆったりと吹いている風に髪を遊ばせながら腕を組んで、門の前に仁王立ちしている美鈴の姿が見えてきた。

でっかい鼻ちょうちん付きの。

あれよだれもたれかけてるんじゃないか? 完璧寝てるよな。
それでいて多分後ろからみたらきちっと門を守っているように見えるんだろう。
前に『咲夜さんにばれないように居眠りし続けて幾星霜……私は究極の寝方を身に付けた!!』とか無駄に壮大に語られた気がする。私が言うのもなんだが、仕事しろよ。

わざと大きい足音をたてながら近づいていくと、首をガクッと揺らして美鈴が目を開ける。
頭が回ってないのか、目をぱちぱちさせてキョトンと私の顔を見つめる。

「………………魔理沙?」
「そうだぜ」
「魔理沙、よね」
「だからそうだって。いい加減起きろ、仕事しろ」

じれったいって言うんだ。今日は虫の居所があんまりよくないんだぞ。
箒の柄で目の前の寝ボケ門番の鳩尾を思いっきり付いてやる。

「ぐほぅっ!?」
「さっさと通せよ、今日はご丁寧にも客人として紅魔館に来たんだぜ?」
「……ぐ、く……きゃ、客人はいきなり攻撃しないと思うんだけど……」
「どこぞの門番が寝ボケてるのが悪いんじゃないか? ナイフで針ねずみになる前に目を覚まさせてやったんだ、ありがたく思え」
「げほっ……寝ボケてたわけじゃなくて魔理沙がいつもと違ったから、おかしいなって」
「今日は弾幕ごっこの気分じゃないんだよ。とにかく早く紅魔館に入れろって。それとも本気出した私と戦いたいのか?」
「いや、そういう意味じゃ……まぁいいや。とにかく客人としてなら、どうぞお通り下さい」

門の前からひょいっと横にずれて私に道を譲る美鈴。
そうそう、最初から素直にそうしてればいいんだよ。

「ところで今日は本当にどうしたの?」
「ちょっとパチュリーに野暮用さ。本を借りに来たわけじゃないから安心しろ」

ただでさえ気分が良くないうえに、早くパチュリーの所に行きたい私の受け答えは自然とぶっきらぼうになる。
その様子を感じ取ってか美鈴はそっか、と短い返事を寄こしてまた門番のための定位置に戻って行く。

「ねぇ、魔理沙、誰かと喧嘩したとかなら早めに謝る方がいいわよ?」

去り際に振り向きながら美鈴が言う。
喧嘩? あいにくとそんなもんした覚えはさらさらない。
なんでそんな事言われなきゃいけないのか意味不明だ。
寝起きだから、こいつの頭の中で夢と現実とがごっちゃにでもなっているのかもしれない。
私は適当にそうだな、と返して紅魔館に足を進めた。

















「よう」

私が背中から声をかけたのは動かない紫もやし、もとい動かない大図書館と言われているパチュリーだ。
見ようによっては機敏な動きともとれなくもない速度で、眠りかけのような半眼を本から上げて私の方に顔を向ける。
そのまま二、三度私の顔を見ながら瞬きをする。
これは……驚いてるんだよ、な? どうもパチュリーの表情は分かりにくくていけない。
もっと表情筋動かせよ。

「今日は随分おとなしい登場じゃない。外で槍でも降ってるのかしら」
「残念ながら完璧に清々しい晴れ模様だぜ。どこかのひきこもりが外に出たらで日光で倒れそうになるくらいのな」

こんなほこり臭い所で引き籠っているんだから、貧弱になるのも当然だと思う。
私みたいに日光の下で元気よく飛びまわればいいのだ。
そしたら進化してパチュリーから筋肉ムキムキのマチョリーに……気持ち悪いな、想像するのやめとこ。

「それで、なんなの? 本を盗みに来たって感じじゃないわね。何か聞きたい事でもあるのかしら」
「ビンゴ。さすがは百年の魔女様、いい勘してるぜ」
「魔理沙に褒められても嬉しくないわね」
「褒め言葉は素直に受け取っておくものだぜ、たとえお世辞でもな」
「ご託はいいわ。聞きたい事って何なの?」
「と、そうだった」

私は今日の朝からの出来事を一通り説明して、机の上に残してあった私のメモと床の魔法陣を書き写した紙をパチュリーに手渡した。

「とまぁ、そんな感じで。変なざわざわ感も途切れないし、若干心配になったからちょっと助言をもらいに来たってわけだ」

内心で感じている不安を押し隠し、軽い言葉で締めくくる。
そんな私の不安をよそにパチュリーは話を聞いてる間からずっと無言を保ち続けている。
今は魔法陣を書き写した紙をじっと見つめている。

きっと色々な知識を総動員して魔法陣の解析をしているのだろう。
なんだかんだいってパチュリーは人に頼まれると真面目にやっちゃうタイプだしな。
しかしここまで表情が動かないうえに、体まで動かないとなるとまるで地蔵みたいだ。
地蔵パチュリー。
なんか知識がたまる地蔵とかで参拝客きそうじゃないか。
パチュリー地蔵様ー、ご利益下さーい。なんちゃって。

と、計ったようなタイミングでパチュリーが私の方に目を向ける。

「おぉう!?」
「何おどろいてるのよ」
「あ、あぁ、いやなんでもない。で、どうだ。その魔法陣どういう魔法かわかりそうか?」
「魔理沙」

表情を崩さず、なんでもないことのようにパチュリーは答えを返す。



「あなた死ぬわよ」




………………は?
思考能力が停止する。
なんだ、なんて言ったのだ、この魔女は。
死ぬ? この私が死ぬだって? そんなバカな。そんな事あるはずがない。

「お、おい、なんだよそれ」
「こんな愚かな魔法を自分にかけるだなんてね、私の魔理沙に対する評価は買いかぶりだったのかしら。愚かしいにも程がある。まぁ助かりたいのなら方法がないわけじゃないけども」

そこで言葉をとぎって視線を注いでくるパチュリー。
ゴクリと自然と喉が鳴る。
助かる方法、それさえあれば―――――

「まずはじめにドロワーズを頭にかぶった状態の下着姿で『私は下着仮面! 幻想郷の下着を守るもの! 夢と希望は下着の中に!』と叫びながら幻想郷中を飛び回って」
「オーケー、ゴートゥーヘル。紫もやし」

高速で右手に構えた八卦炉に力を込めていく。

「まちなさい、魔理沙。人の話は最後まで聞くものよ」
「うるさい! 人で遊びやがって! 言っていい冗談と悪い冗談があるだろうが!」
「心外ね、冗談じゃないかもしれないじゃない」
「冗談じゃないのか?」
「馬鹿ね、冗談にきまってるじゃない」

ダメだ、頭の血管切れそうだ。
とりあえず怒りのせいで迸る熱いパトスを、マスタースパークにして放出しておく。
……ちっ! こういう時に限って普段からは信じられない速さで椅子ごと横によけやがる。
あまりの速さだったせいかパチュリーの残像が出来て、その残像が『こぁー!?』という叫び声とともにマスタースパークで吹っ飛ばされていく。
ん? 残像じゃなくて身代わりの術か? 魔女のくせに忍者ってなんだそれ。
どーんと壁にマスタースパークがぶつかる音とともに、目の前でパチュリーが溜息をつく。

「全く、落ち着きなさいよ、はしたないわね」
「あんなタチの悪い冗談言う方がよっぽどはしたないと思うんだがな!」
「あんな下らない魔法陣見せられれば、タチの悪い冗談の一つや二つ言いたくなるわ」
「は?」
「さっき言った死ぬって所は冗談だけど、魔理沙を愚かだと思ったのは本当よ。こんな魔法陣を実行するなんて馬鹿じゃないかしら?」
「ちょ、ちょ、ちょい待て。どういうことだ、あの魔法陣の事そんなに詳しくわかったのか? どんな魔法なのか説明してくれよ」

普通、魔法陣というのは組み上げるのに多大な時間と労力をかけるもので、基礎的な魔法陣の上にさらにオリジナリティの要素を付け加えるとその効果の表れ方はまさに無限大となる。
特に私は自己流を激しく追及するため時には基礎すら吹っ飛ばして、効果を強める場合がある。
そのため上手くいくときはいいが失敗すると副作用みたいなものが出る時もある。
今回みたいに記憶が飛ぶとかな。

ま、それは置いておいて、そういう風に組み上げられた魔法陣の解析を他人がやる場合それなりの時間がかかるものなのだ。

だからさっき『死ぬ』って言われた時にもう少し冷静だったら即座に『嘘だろ』って返せたのに。
くそ、今日の私はダメだ。

「分かるわよ。この魔法陣、効果が半日で切れるような組み上げられ方だから結構簡素化されているし。後はここ最近のあなたが盗んでいった本の傾向とか、今のあなたの状態と様子から複合的に考えていけば、大体はね」
「そうか、良かった、さんきゅっ! それでどういう魔法なんだ?」
「それは教えない」

さらりと拒否の言葉を口にするパチュリー。
あまりにも自然に断られたため、『おう、そうか』と返事をしそうになってしまった。

「な、なんでだよ!? 別に教えてくれてもいいじゃないか!」
「嫌よ。毎回本を盗まれているのと、こんな愚かな魔法陣を見せてくれたお礼だとでも思って頂戴」
「本は借りてるだけだ、死ぬまでには返すさ。……というかそんなにダメな魔法なのか?」
「えぇ、とっても。なんか魔法使いとしてどうのこうのというよりも、人間として終わってる感じね」
「そ……そこまで」
「まぁ、半日で効果は切れるんだし、多分身体への害はないから安心するといいわ。飛んだ記憶もそのうち戻るでしょ」

がくりとうなだれる私を尻目に、話は終わりだとでもいうようにパチュリーは読みかけの本へ視線をむける。
こうなってしまったら泣こうがわめこうが絶対にこの魔法がなんなのかなんて教えてくれないだろう。
パチュリーは頑固者だからな。こうと決めたらてこでも動かない。
精神的な意味でも、物理的な意味でも。なんせパチュリー地蔵だから。

なんとなく釈然としないが恐らく効果が切れてみればどんな魔法だったか分かるだろう。
もしくは魔法が切れる前に記憶が戻るかも知れない。
そう前向きに考えてとりあえず図書館から出て行こうと歩き始めると、パチュリーから声がかかる。

「ねぇ、魔理沙。ここは図書館よ。大量に本があるわね」

当たり前のことを口にのぼらせる。
何言い出したんだ、こいつ。
一応足を止めてパチュリーの方へ向き直ると、パチュリーの目線は相変わらず本の上だった。

「本、特に物語とかが顕著だけれど、ああいうものは途中のページを破られたりすると意味が通じなくなる。そのページに物語の根幹をなす大切な事が書いてあればあるほどね。酷い時にはたった数ページ破られただけでその本の存在価値が急落してしまう場合があるわ」

私は何となく口をはさめなくて、ただ黙って聞いている。

「作者自身が気に入らないと破り捨てるのならまだいいわ。自分で綴った物語だもの、自分の好きなようにする権利がある。でも他人が勝手に都合が悪いからとページを切り取るのは、愚かしい行為だわ。例えそれがその物語をつづった作者のためになるかもしれないとしても、よ。余計なお世話ってことも有り得るし、その物語に対する冒涜。なぜそんな事をしたのかという理由は重要じゃないのよ。要はその行為自体が罪なんだもの」

何が、言いたい。
そう視線に圧力を込めてパチュリーの方をじっと見つめる。
その視線に気づいたか気付かないのか、パチュリーは本を見たまま溜息をつく。
そして私の方へ顔を向けた。

「私が言いたい事はそれだけ。本を破るなんて真似よしてちょうだいって事よ」

がくっと体の力が抜ける。
なんだっていうんだ、そんな当たり前の事をいいたいがためにわざわざ呼び止めたっていうのか。
不肖霧雨魔理沙、本を借りても破るなんて真似一度もした事がない。
そこまでひねくれてない。

「おいおい、私は本を破ったりなんかしないぞ? 本は大切なもんだからな、借りはするけど破損なんてさせないぜ」
「そうね、ならいいのよ。あなたならやりかねないから、先に忠告しただけだし」
「む、しないぞそんなこと! 絶対にな!」
「はいはい。じゃあね、魔理沙。次からも今日みたいな大人しい来訪を期待するわ」

パチュリーはそう言ってそのまま読書に没頭し始める。
なんて言うマイペースなやつなんだ。
このイライラ感は次回の訪問時にマスタースパークを3発くらい打ち込む事で解消することとしよう。

足音高く図書館を後にする。
さて、これからどうするか。
大丈夫だと太鼓判を押されたが、一人で居るとなんか不安に駆られるしな。

よし、ここはいつも暇してる巫女んとこでも行って時間をつぶすか。

















「おーす、霊夢。邪魔するぜ」

緩やかな午後の時間帯、霊夢は特別な用事がない限り、掃き掃除をしているか縁側でお茶をしているか昼寝をしているかのどれかである。
私は鳥居の前に降り立って、境内を通って庭に回り込む。

「あら、魔理沙じゃないの」

すると縁側には私の予想通りお茶を飲みながらボーっとしている霊夢がいた。
青空に紅白、色合い的には何とも風靡である。
今一つ物足りない気もするが、好きな色の取り合わせなので合格点をやろう。
風に揺られる霊夢の赤いリボンが何かを彷彿とさせるが、なんだったろうか。

「今日はどうしたのよ」
「いや、ちょっとな、遊びに来ただけさ。時間つぶしにな」

ふーんと頷いて、霊夢は私の事をじろじろと見てくる。

「なんだよ、なんか顔についてるのか?」
「別にそういうわけじゃないけど、ね」

と、私の上をさまよっていた視線が、私の手に握られている袋にたどり着く。
さすが貧乏巫女、目ざといな。
手を持ち上げて袋を霊夢の目の前で揺らす。

「さっき紅魔館に行ってきたんだが、帰りに咲夜に貰ったんだよ。マドレーヌって菓子らしいぞ」
「へぇ、ますます珍しい。咲夜があんたにお土産渡すなんてね」
「なんか大人しい来訪は歓迎とかなんとか。ただ大人しい私はイメージに合わないから、さっさと元に戻れって言ってたな。別に弾幕ごっこする気分じゃなかっただけなんだがな」

言いながら霊夢の横に腰を落とす。
ぽかぽかの陽気は何ともすごしやすい。
いつも通りのセルフサービスで、霊夢の横に置いてあった茶器からお茶を汲む。
その間霊夢はごく当然に袋の中を探ってマドレーヌを取り出している。
なんか知らんが、一人じゃ食べきれないくらい咲夜が包んでくれたから量もたっぷりあるし、いいんだけど。
そういえば『一人じゃこんな食べれない』って言ったら『どうせ二人で食べるんでしょ』と言われた。
私が霊夢のところに行くのが分かっていたのかな、さすが完璧で瀟洒なメイド様だぜ。

お茶を入れてゆっくりすすると、安い茶葉の香りがした。
やっぱり普段よりもまずく感じる。つーか酷い味だ。泥水じゃないだろうな。
ここのお茶は決して美味い訳ではないが、こんなにまずくはなかった気がする。
やっぱり魔法の効果は薄れていない。むしろ酷くなってないか? これ本当に半日で効果切れるんだろうな?

不安な思考をそらすように霊夢の方を見ると、何故か霊夢はマドレーヌを右手で顔の前に摘みあげたままじっと見つめている。
霊夢が即座に食べ始めないなんて珍しい。
大抵腹を空かしているから、お土産なんてあったら即効かぶりつくのに。
しかし、マドレーヌと霊夢か。響きが似てるな。
まどれーぬ、まどれいぬ、まどれいむ、まどれーむ、マドレーム!
味は微かなお茶味、紅白の二つ詰めで価格は200円とか。
博麗神社土産とかで売り出せばいけそうじゃないか?

「ねぇ、魔理沙」
「あ?」

明後日へ飛びかけていた思考を現実へ引き戻す。
霊夢は相変わらずマドレーヌを持ったまま見つめている。

「あんた今日様子変だわ。なんかあったの?」

ちょっと息がとまった。
やっぱり勘だけは鋭いな、この巫女は。

「さすが霊夢だ。ま、なんだ、ちょっと魔法の実験しててな。そのせいで変に見えるかもしれないな」
「ふーん。どんな魔法なのよ」
「それが魔法のショックで、魔法を使う前の記憶がちょっとあいまいでな」

おどけたように言って、内面を出さないように努力する。
こんなぐらぐらでゆらゆらする気持ちを霊夢に知られたくない、なんとなく。

「半日で効果は切れるから、今日の夕暮れくらいには効果がなくなるはずだ。だから後少しで元に戻る。そのころには記憶も元通りに戻ってるといいんだがな」
「そう、半日で効果が切れるならよかったんじゃない? なんかロクな魔法じゃなさそうだし」

ロクな魔法じゃない? なんで魔法の事を何にも知らない霊夢がそんなことわかるんだ。
そういえば同じような事をパチュリーにも言われたな。
人間として終わってる、愚かな魔法だって。
記憶にはないが魔法を自分にかけたのは間違いなく私なのだし、その魔法の事をこき下ろされるってことは馬鹿にされているって事だ。

「……失礼だな。魔法の事を知らないくせにロクでもないなんて言うな」
「そうね、私は魔法の事は知らないわ」

何故か弱弱しい反論になってしまった私に対して、霊夢は言葉を返す。
その手には相変わらずマドレーヌ。
気づけば霊夢の目は私の目をしっかりと見据えていた。

「でも、魔理沙の事は知ってる。あんたがそんな風になる魔法なんてきっとロクなもんじゃないわ」

言いきる霊夢。
一瞬呆然とする私。
そんな風? 今の私の感じてる違和感が霊夢にはわかったのか?
馬鹿な。そんな事一言たりとも話してないし、できるだけ普段の自分と変わらないよう振舞っている。

「……そんな風って、どんな風だよ」

代名詞だらけの応対。しかし、意味はきちんと通じる。
私が言った事に対して、霊夢はやれやれと首を振りながら溜息をつく。

「気づいてないの? あんたここに来てからずっと表情が変わんないのよ。迷子の子供みたいな、不安そうで、泣きそうな、そんな感じの目をしてるわよ」

はっはっ! そんなバカな!
そう笑おうとして顔の筋肉が強張ったように動かない事に気付いた。
笑おうとしても、まるで笑い方を忘れたみたいに顔が固まったままなのだ。

言われてみれば今日は一回も笑っていない気がする。
博麗神社に来る前から、ずっと。
目が覚めた時から、ずっと。

なんだ? なんだ? 私はいったいどうなっているんだ?

「そんな混乱しないでよ。どうせしばらくしたら効果が切れるんでしょ? 今日はもう家に帰って大人しくしてたらいいわ、そんな湿っぽい顔で神社に居られても困るし」

俯いて、考え込んでいる私の顔の前にマドレーヌを包んでいる袋が突き付けられる。
訳がわからなくて、マドレーヌの袋の横から霊夢の顔をのぞき見る。

「持って帰んなさい。甘いものでも食べれば元気になるわ」

そう言って霊夢は私の手にぎゅっと袋を持たせた。

















かさ、かさかさ、かさ。

足で落ち葉を踏み分けて、私は家路をたどっている。
飛んで帰る気分でもなくって、時間つぶしも兼ねて森の途中からは徒歩である。
手に持っている箒とマドレーヌの袋が少し邪魔ではあるがな。
思えばこうして景色を見ながらゆっくりと歩くのも久しぶりだ。

だが歩いていても自然と気になるのは、今日の出来事。

ろくでもない、魔法。結局なんなんだろう。

見た目は変わっていないし、魔法も使える、空も飛べる、弾幕ごっこだってやろうと思えばちゃんとできるだろう。
変化が起こっているのは私の内面にある、変なざわざわ感やちょっとしたいらつきだ。
後、味覚とかもおかしくなっている。
感情や感覚に狂いが生じる魔法。
こんな変化が起こるような魔法なんて、私に心当たりは全くない。
ていうかなんでこんな訳のわからん魔法を自分にかけたんだ?
分からん、分からん。
早く記憶が戻ればいいのに、そんな兆候はさらさらない。
断片的にでも思い出せばいいのに。くそ。こうなりゃショック療法だ。

立ち止まり、持っていた箒の柄で自分の頭をたたく。

ごつん。

…………あっつぅ~~っっ……! 強く叩きすぎた!
普段八卦炉から飛ばしている星が、私のつむった目の中でびゅんびゅん飛んで行った。
こんなときにも弾幕はパワーって事か。さすがだぜ私。
若干涙目になりながら、頭の中で負け惜しみを―――

「そう、弾幕はパワーなんだ。 そうだろ?」

頭の中で言った負け惜しみは、何故か口の上に滑り出ていた。
同意を求めるような口調で。隣に居る誰かに聞こえるよう。

誰も、いないのに。今、私は一人なのに。

「なんだよ……。結局記憶戻んないし、叩き損かよ」

ごまかすように私はさらに言葉を重ねて、両手にぎゅっと力を入れる。
今感じた違和感を、渇望を、空虚さを、振り切るために。

唇を噛んで俯いていた私に柔らかな風が近づいて、私の金色の髪を赤い光の中で踊りに誘う。

ふと気づけば博麗神社を後にして、だいぶ時間が過ぎていた。
木の隙間から見える太陽の光は西へと傾き、空は赤と金色で覆い尽くされている。

明日へと向かう為の休息を得る太陽。
光が織りなす赤と金色のグラデーション。
梢から私の肌をオレンジに染める暖かい夕日。
緩やかな風に揺れ歌を奏でる若葉達。

単純で素朴だけど、綺麗で美しい。

だが今の私はそう感じない。
頭で理解はできる。綺麗だな、暖かいな、美しいな。
しかし感情が動かない。
感覚が動かない。

心が、動かない。


だって、私は今。

私は今、足りないんだ。

足りない。
足りない。
全然足りない。

思えばずっと足りなかった。
博麗神社でも。
紅魔館でも。
家で紅茶を飲んでる時でも。

あの魔法を使った時からずっと、ずっと足りなかったんだ。

息が荒くなる。
私の足が自然と家に向かって駆けだしていたせいだ。
箒も、マドレーヌの袋も、両手に抱き抱えて一目散に走る。
相棒である帽子のつばが、向かい風によってはためいて、耳元でうるさい抗議をあげている。
そんなに急がなくてもいいじゃないか、もう、お前も気づいたんだろうって。

うるさい、うるさいっ。

抗議に応えるように帽子を目深にかぶり直す。
のどが痛い、息が苦しい。目が熱い。
勝手に目から雫が流れて、頬を伝う。
それを手で乱暴にぬぐう。

苦しい。苦しいんだよ。本当に、苦しいんだ。

太陽が眠りに着く直前、夜と夕暮れの中間地点。
徐々に闇が広がり効かなくなっていく視界の中に浮かび上がる、たったひとつの光。
家が見えてくる。ゴール地点だ。

もうすぐだ。もうすぐだから。

自分を励ますように、叱咤するように声にならない声で呟いて必死で足を動かす。
光のともる家に全ての答えがあるから。


ゆっくりと止まる。
目の前にあるのは家のドア。
ぜぇぜぇという呼吸音と上下運動を頼まれもせずにやる肩、きっと今の私は笑ってしまうくらいひどい状態だろう。
だがそんなのは気にならない。

手を伸ばしてドアノブを回す。
はやる気持ちと反対に、ゆっくり、そうっと。

薄暗闇に慣れてしまった目に、部屋の光が飛び込んできて思わず目をつぶってしまう。



「あら、魔理沙、いらっしゃい」



聞こえてきた声が耳を打つ。
足りなかった全てを埋めてくれる、魔法の声。

「――――アリス」

ドアノブを握ったまま微動だにしない私に向かってアリスが部屋の奥から近づいてくる。
いつも通り出迎えるために。

「町での用事が早く終わったから、これからあなたの家に行こうと思ってたのよ。タイミングばっちり……って、魔理沙、どうしたの?」

怪訝そうに私の事を見るアリス。
当然だ。今の私は森を全力疾走した後だ。
ほこりまみれ、葉っぱまみれ、切り傷や擦り傷もどきをそこかしこにこさえている。

「何か、あったの?」

アリスが私の前に立って、そっと目をのぞきながら声をかける。

「アリス!」
「きゃっ」

思わず私はアリスを抱きしめる。
ドサッという持っていた荷物が落ちる音がする。
箒は大丈夫だけど、マドレーヌは少しつぶれちゃうかな。
でも今はそんな事どうでもいい。ただアリスを抱きしめたい。存在を体全体で感じたい。

「もう、急にどうしたっていうのよ」

急に抱きついたせいか、軽く怒ったようにアリスが言う。
でもその手は抱きついた私の背の上を、優しくゆっくりと往復している。

あぁ、これだ。これが足りなかった。

アリスという存在が、ずっとずっと足りなかった。

アリス、ごめん。本当に、ごめん。
私は自分で自分に魔法をかけた。


『恋人の記憶を封印する魔法』を。


アリスと恋人同士になってから何気ない日常がきらきら輝いて、楽しくて仕方のない毎日で。
頬笑みあって、怒りあって、笑いあって、いがみあって、分け合って、また笑いあう日々。
つなぎ合える手が、見つめあえる目が、抱きしめあえる体が暖かくて愛おしい。

そんな中でふと思ってしまったんだ。
付き合い始めてから少し背が伸びた私と、変わらないアリス。
私とアリスは人間と妖怪。
寿命が来れば私はアリスよりも先に逝くだろう。
その時にアリスは、笑っていられるのだろうか?
恋人の死という現実を抱え込んでいきていくのだろうか?

私はアリスに幸せに生きてもらいたい。どんな時でも笑っていないと嫌だ。
例え私が居なくなったのだとしても。

ならばどうすればいいのだろう。
考えたさ。おおいに考えた。アリスのためなんだから。
そして結論を導いた。

幸せに生きるために『恋人の記憶』が重荷になるならば、私が死ぬ時にアリスから私の記憶を消せばいいんじゃないかって。

もちろんこれが正しいなんて思っちゃいない。ただ、一つの実行案としてはありだ。
恋人から忘れられるのはつらいけれど、そうすればアリスが幸せになれるのなら仕方が無い、許そう。あぁ、大人だなぁ、私。アリスには秘密にしておこう、怒られるかもしれないし。

軽い気持ちでそう思った。

まず、物は試しだ。自分の体で試してみよう。
パチュリーの所からたくさん本を借りて、魔法の森を駆けまわって、徹夜で魔法式を組んで。
そうして練り上げた魔法陣。『恋人の記憶を封印する魔法』。
もちろん実験だから効果は半日、でも試すには十分だ。

そして、今日、アリスが町へ出かける予定があったから、早速やってみる事にした。
記憶を封印する魔法だから、『魔法を使った』事自体を忘れる可能性があるので自分宛てにメモも残した。
万全の態勢で挑んだ。

成功だった。これ以上ないくらいに成功だった。
魔法は遺憾なく効果を発揮し、私はアリスの事を半日の間すっかり忘れていた。
魔法自体の出来としては何の文句もない。花丸さ。

でもダメだった。

アリスの記憶を失った半日間は、それはそれはひどいものだった。
アリスという土台を失った私の心は、たやすく崩れる砂の楼閣のようにもろいものになっていた。
大きくなっていく感覚と感情の狂い。動かない表情。正体不明の違和感。
それはきっと自分の心が悲鳴をあげていたからだ。叫んでいたからだ。
苦しいよ、苦しいよ、お前はなんてことをしてくれたんだ、と。
その声を私はずっと感じ取っていた。

でもなぜ自分の心が軋んでいるのか、気づく事は出来なかった。私が無意識に求めるものがなんなのか、悟る事は出来なかった。
魔法はあまりにも完璧だったんだ。

だから、ただ心があげる悲鳴を聞き続けるしかなかった。これは、地獄だ。

美鈴と咲夜に気づかわれ。
パチュリーに驚かれ。
霊夢に心配された。
いつもの私とはかけ離れた姿だったろう。
そんな風にしてしまう魔法をアリスに、軽い気持ちとはいえ少しでもかけようと考えた自分の馬鹿さ加減に、なんとも言いようのない怒りを感じる。

パチュリーが魔法を散々こき下ろしたのも、今なら分かる。

あの時パチュリーに言われた、本の事。あれはきっと、私への忠告。
アリス・マーガトロイドというページを破られた、霧雨魔理沙という本は、その存在が揺らいでしまうほどの大ダメージを受けた。
その上私は自分の都合でアリス・マーガトロイドという本から、霧雨魔理沙というページを破ろうとも考えていた。

――――本を破るなんて真似よしてちょうだい

あぁ、全くだ、言われるまでもない。そんな真似、金輪際するもんか。


ごめんアリス、こんな自分勝手で、馬鹿な私で本当にごめんなさい。


口に上る事のない謝罪を込めて、アリスを抱きしめている両腕に力を入れる。

「苦しいってば」

くすくすと笑いながら、抗議するように私の背中をとんとんと叩く。
最後にぎゅっともう一度だけ強く抱きしめて、そっと体を離すとアリスは苦笑いのような、困ったような顔をしていた。

「本当にどうしたのよ? そんなにぼろぼろで。しかもいきなり抱きつくし」
「いや、なんとなく抱きしめたくなってな。猛る力を両足にこめて、急いでアリスのところにはせ参じたんだよ」

ぐっと言葉に詰まり照れるアリス。にやっとした笑みを浮かべる私。
いつものやり取りが、いつも以上に幸せで、嬉しい。
私もようやっと本調子に戻り始めたようだ。

「な、なら飛んでくればいいじゃない。わざわざ走ってくる事無いでしょ、箒もあるのに」
「いやー、アリスに会いたい気持ちが爆発しそうでな。体を動かしてないと本当に爆発するかもしれなかったんだぜ」
「……っ! いい加減な事言って、もう……。とりあえず上がったら? 夕飯前だけど、のど乾いてるなら紅茶入れるわよ」
「おう、悪いな」

そう返事をすると、アリスはそのまま台所へ行き紅茶の準備を始める。
アリスはクールに振舞おうとしているが、頬を染めているのがまる分かりだ。

その姿を見ながら私は思う。

アリス、ごめんな。
私はいつか死ぬ。
人間だから別れは必ずやってくる、避けられはしないのだ。
その時、アリスは泣くかもしれない。傷つくかもしれない。絶望するかもしれない。
私が一緒にそばに居て支える事も出来ない。
でも、その事実から目をそむけないで乗り越えてほしい。
目をそむければ今日の私みたいな、酷い結果になってしまうかもしれないから。

それに、アリスが笑っていられるように、私もできる事を精一杯やる。
記憶を封じるという案と一緒に考えたもう一つの案。

アリスをとんでもなく幸せな記憶で一杯にして、私が居なくなった後でも幸せパワーで笑っていられるようにする。

パワーが信条の私だ。
記憶を封じるなんて小手先よりもこっちの方があってるし、きっと正しい。
アリスを幸せの砂糖漬けにして、涙なんか乾かしてやるんだ。

この案はきっと時間がかかるだろう。死ぬまでかかるだろう。
でもそれでも私はやり遂げる。あきらめの悪さは折り紙つきだし。

それになにより私は。


「どうしたの、いつまでも玄関で立ってて。紅茶、もうすぐできるわよ」
「おう、ありがとな。今行く。あ、そうだアリス」
「何?」

机にティーカップをそろえながら、私の方を振り向く私の恋人。


「愛してるぜ、アリス」


何より私はアリスの事が大好きだから。

「~~~……っ、ちょ、直球すぎよ、ばか」

アリスが顔を真っ赤にして急いで背中を向け、私への文句を口にする。
でもその口元が嬉しそうに笑っていたのを見逃す私じゃない。
そう、こうやって少しずつ幸せをアリスに降り注いでやろう。
いつか来るだろう未来でも、アリスが笑っていられるように。

私は床に落ちた箒と袋を拾い上げた。
箒はそのまま壁に立てかけて、マドレーヌが入った袋を抱えてアリスの方へ向かう。
紅茶のいい香りが私を包む。
今日はほとんど何も食べてないからお腹も減ったし、夕飯前だけどマドレーヌもつまもうかな。アリスと一緒に。

そのあとで、アリスをどうやったら幸せまみれに出来るか考えるとするか。





とりあえず今は咲夜がくれたハート型のマドレーヌと一緒に、紅茶を飲もう。





今度の紅茶はきっと、飛びきり上等の味がするだろうから。
















以下後書き

     
『恋、それは必ず別れが来るからこそ燃え上がるものよ』    ウ・サン・クサイナユ・カリン氏の発言

というのは冗談でちょっと寿命差をテーマに何か書いてみたかったのです。
ただどっちかが死んじゃうような寿命差だと書いてる時に鬱になりそうなので、こんな感じになりました。
人生初の一万字を軽く超える長文……自分頑張った。
とりあえずマリアリはキャッキャウフフしてればいい。そして周りの人間を砂糖まみれにしてしまえばいい。
タグにマリアリって入れちゃうとネタばれになるから泣く泣く削ったのはいい思い出。

拙い作品ですがここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
マリアリが俺のじゃすてぃいいいいいす!



追記


そういえば『遠回りな答えの出し方』の感想で、【力づくで正解にするのが、魔理沙の答え】という風に言って下さった方がいました。
この感想を読んだ時に、私は目からうろこの気分でした。

正解を導きだすのではなく、正解をもぎとるのが私が書きたかった魔理沙なんだなぁ、と。

時に読者様の方が、作者の言いたい事をより正確に把握できるんですね。


相当前の話ですし、ここは辺境地なのでこの感想を下さった方が読むことはほぼないと思いますが、この場で心よりの感謝を表したいです。
もちろん他の感想を下さった方たちにも深い深い謝意を表します。




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【2010/04/29 19:53】 | SS
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こがぬえ 小傘 ぬえ 百合 カプが広まればいいのに



続きは収納

「ぬえはわちきの事、どう思う?」







その一言に横に居る小傘の方を向くと、微妙に頬を染めてうつむいている。
なんでいつもこんなに照れるのだろう。
こればっかりはきっと何度やってもなおらないんだろうなぁ。




そう、これはいつもの決まり切ったやり取り。




いつも通りの質問をされたから、いつも通りの答えを返す。




「私はぬえ。妖怪の、鵺。その身上は正体不明。私が何を思って、どう行動するか、ぜーんぶ正体不明。だから私が小傘をどう思ってるかも、正体不明」





正体不明。





これが私の特徴であり、性格であり、能力だ。
それは誰に対しても一緒。
誰かを特別扱いなんかしない。
もちろん、小傘にも。


でも、決まった答えを返すと小傘はいつも不満そうな顔をする。
人間を驚かすには向かない可愛らしい顔で、私に対しての抗議のつもりなのか、頬を精一杯膨らませている。
白い頬がぷっくりと膨らんでる様子は、まるでお餅のようだ。




これも、いつも通り。




小傘だって、きっと表情に出ているほど不満に思ってない。
だってこれは結果に至る過程の一つなんだから。




「ずるいよ、わちきには無理矢理、す、す、好きだって言わせるくせに」




『好き』って所でどもるのはご愛敬。
にやにやしながら私は答える。




「小傘は私の事が好き。でも私の全部は正体不明。残念だったわね」




俯いていた小傘の目線がゆっくりとあがり、私の目をみる。



あ、頬が赤い、赤い。

あ、目が期待と恥ずかしさでちょっとうるんでる。

あ、口元が少し緩んでいる。




一瞬のうちにそれだけ見て取った私へ、言葉が投げられる。




きっと、これもいつも通り。





「じゃあ、わちきはどうやって、ぬえの思いを確認すればいいのさ」





やっぱり。




あまりにもいつも通りで、おかしくて、嬉しくて、つい微かに笑ってしまう。
小傘が気づかないほど、微かに、そっと。





いつも通り。
なんて楽しいんだろう。



決まり切った、やりとりのはずなのにね。





ねぇ、小傘、私ね―――――











「それはね」












小傘の事、大好きだよ。







ふれあいは優しく。

想いを唇から、唇へ。

言葉では伝えきれない想いを唇から、唇へ。







触れ合わせた唇をそっと離し、最後の台詞を声にする。






「行動から、判断するのよ」






そっかぁといって、嬉しそうにほほ笑む小傘。
そうなのよといって、軽くうなずく私。



そして同時に笑いだす。



二人して夕焼けみたいな顔色なのは、やっぱりご愛敬。














そう、これはいつもの決まり切ったやり取り。







恥ずかしがり屋のあなたから、素直じゃない私への、決まり切ったおねだり。














以下後書き

   
      
キスのねだり方はカップルによって違うんだよ!というお話です。なんだそれ。


こがぬえって意外といけるよね、というコンセプトの元超短時間で書き上げた一品。うーむ、短い。
こがぬえ流行ればいいのに…!誰かが流行らしてくれればいいのにっ!(他力本願)

そして、こがぬえが俺の新境地!!



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【2010/04/29 19:51】 | SS
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